この記事を要約すると
- 遺言執行者の報酬に一律の基準はなく、財産額や手続き内容、依頼先によって異なります。専門家では財産額の1~3%程度や、最低30万~50万円程度を目安とする例があります。
- 遺言執行者には、家族や親族のほか、司法書士や弁護士などの専門家を指定することもできます。各種相続手続きを任せたい場合は、必要となる手続きに応じて専門家を選ぶことが大切です。
- 相続税の申告・納付が必要な場合、その義務を負うのは原則として相続や遺贈で財産を取得した相続人・受遺者です。遺言執行者の職務ではないため、必要に応じて税理士へ依頼します。
遺言執行者の報酬はいくら?相場の目安
遺言執行者を司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合、報酬が必要になるのが一般的です。ただし、法律で一律の金額が決められているわけではなく、依頼する専門家や財産額、手続きの内容などによって異なります。
まずは、遺言執行者がどのような仕事を行い、報酬がどのように決まるのかを確認していきましょう。
遺言執行者は何をする人?
遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に、遺言の内容を実現するための手続きを行う人です。
具体的な仕事は遺言の内容によって異なりますが、主に次のようなものがあります。
- 相続人への遺言内容の通知
- 相続財産の確認
- 財産目録の作成
- 預貯金の解約や払戻し
- 遺言に基づく財産の引渡し
- 不動産や有価証券などに関する手続き
民法では、遺言執行者が任務を開始したときは相続人に遺言内容を通知することや、相続財産の目録を作成して相続人へ交付することなどが定められています。
遺言執行者が行う手続きは、遺言の内容や財産の種類によって異なります。不動産や複数の預貯金、有価証券などがある場合には、それぞれに応じた手続きが必要になります。
遺言執行者の報酬に一律の金額はない
遺言執行者にはその業務に対する報酬を定めることができます。ただし、遺言執行者の報酬について、法律で一律に決められているわけではありません。
民法1018条では、遺言者が遺言で報酬を定めている場合はその定めに従い、定めがない場合には、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって報酬を定めることができるとされています。
そのため、実際の報酬額は、誰を遺言執行者にするかだけでなく、財産額や財産の種類、手続きの内容などによって変わります。
たとえば、預貯金が1口座のみの場合と、複数の不動産や金融機関の口座、有価証券などがある場合とでは、遺言執行者が行う手続きの量は異なります。また、財産を渡す相手が多い場合には、連絡や財産の引渡しにも時間がかかります。
「遺産が5,000万円なら報酬は必ず○万円」と考えるのではなく、財産の規模と実際の業務量の両方を踏まえて判断する必要があります。
専門家に依頼した場合の報酬相場
司法書士や弁護士などの専門家に遺言執行を依頼する場合、報酬は事務所によって異なりますが、遺言執行の対象となる財産額の1~3%程度を目安とする例があります。また、最低報酬として30万円~50万円程度を設定しているケースもあります。
たとえば、遺言執行の対象となる財産が5,000万円の場合、1%なら50万円、2%なら100万円、3%なら150万円です。
ただし、これらは法律で定められた金額ではなく、あくまで料金設定の一例です。実際の報酬は、財産額だけでなく、不動産や預貯金の数、相続人・受遺者の人数、必要となる手続きの内容などによって変わります。
そのため、「遺産総額の○%なら必ず適正」というわけではありません。依頼を検討する際は、提示された報酬額とあわせて、どこまでの手続きが含まれているのかを確認することが大切です。
家族や親族が遺言執行者でも報酬を受け取れる
遺言執行者は、司法書士や弁護士などの専門家に限られるわけではありません。子どもや兄弟姉妹などの家族・親族を指定することもできます。家族を遺言執行者とする場合、無報酬とすることもできますが、遺言書で報酬を定めておくことも可能です。
遺言執行者になると、財産目録の作成や金融機関での手続き、財産の引渡しなど、一定の時間と労力が必要になります。特に、複数の子どものうち一人だけを遺言執行者に指定した場合には、その人に手続きの負担が集中することもあります。
そのため、「家族に頼むから報酬は必要ない」と決めつけるのではなく、財産の内容や予想される業務量を踏まえて検討するとよいでしょう。
誰を遺言執行者にするのかとあわせて、報酬を設けるかどうかまで遺言書の作成時に考えておくことが、将来の負担や不満を減らすことにつながります。
遺言執行者の報酬はどうやって決める?
遺言執行者の報酬には一律の基準がないため、遺言書を作成する段階で、報酬についても考えておくことが大切です。特に専門家を遺言執行者に指定する場合は、報酬額だけでなく、計算方法や別途必要となる費用まで確認しておきましょう。
遺言書で報酬額を定める
民法1018条では、遺言者が遺言によって遺言執行者の報酬を定めることが認められています。
報酬の定め方としては、「金50万円とする」のように一定額を指定する方法のほか、「遺言執行の対象となる財産額の○%」など、計算方法を定めることも考えられます。
ただし、遺言書を作成してから相続が発生するまでに、財産の額や内容が大きく変わることもあります。そのため、専門家を遺言執行者に指定する場合は、どのような基準で報酬を算定するのかを事前に確認し、その内容を踏まえて遺言書を作成するとよいでしょう。
報酬を定める際は金額だけではなく、どの財産を報酬算定の基準にするのか、どこまでの業務を含むのかを明確にしておくことも重要です。
遺言書に報酬の定めがない場合
遺言書に報酬について記載していないからといって、遺言執行者が必ず無報酬になるわけではありません。
民法1018条では、遺言に報酬の定めがない場合、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができるとされています。
実際に家庭裁判所には「遺言執行者に対する報酬付与」の申立手続があり、裁判所の案内では、遺言執行報告書や遺産目録、遺産に関する資料などの提出が求められています。
相続開始後に報酬をめぐって認識の違いが生じることを防ぐためにも、遺言執行者を指定するときは、報酬についてもあわせて検討しておくと安心です。
報酬額を決めるときに確認したいポイント
| 確認するポイント | 確認する内容 |
|---|---|
| 財産の額 | 遺言執行の対象となる財産はいくらか |
| 財産の種類・数 | 不動産、預貯金、有価証券などがどの程度あるか |
| 相続人・受遺者 | 人数や居住地、連絡にかかる手間 |
| 手続きの内容 | 金融機関や不動産など、どのような手続きが必要か |
| 報酬の算定方法 | 定額か、財産額に応じた割合か、最低報酬があるか |
| 報酬に含まれる範囲 | どこまでの業務が基本報酬に含まれるか |
| その他の費用 | 実費、消費税、他の専門家への依頼費用など |
報酬額を決めるときは、遺産の総額だけではなく、遺言執行にどの程度の手間がかかるのかも確認します。
同じ5,000万円の財産でも、預貯金が一つだけの場合と、複数の不動産や金融機関、有価証券などがある場合とでは、必要となる手続きは異なります。
そのため、単純に財産額だけで報酬を判断するのではなく、遺言の内容を実現するために、どの程度の業務が必要になるのかを踏まえて決めることがポイントです。
報酬とは別に遺言執行の費用がかかる
遺言執行では、遺言執行者への報酬とは別に、実際の手続きを進めるための費用が発生することがあります。
たとえば、戸籍謄本や登記事項証明書などの取得費、郵送費、交通費、不動産登記にかかる登録免許税などです。また、遺言執行者とは別に司法書士や税理士などへ専門的な手続きを依頼する場合には、その報酬が別途必要となることもあります。
民法1021条では、遺言の執行に関する費用は相続財産の負担とされています。そのため、専門家を遺言執行者に指定する際は、遺言執行者への報酬と、手続きに必要な実費・他の専門家への費用は分けて確認することが大切です。
遺言執行者は誰に頼むべき?
遺言執行者には、家族や親族のほか、司法書士や弁護士、税理士などの専門家を指定することもできます。誰が適しているかは、財産の内容や必要となる手続き、家族関係などによって異なります。
財産関係が単純なら家族や親族
預貯金などが中心で財産関係が比較的単純であり、相続人同士の関係も良好な場合は、家族や親族を遺言執行者に指定する方法があります。
家族や親族が無報酬で引き受ける場合は、遺言執行者への報酬を抑えられます。ただし、財産目録の作成や金融機関での手続き、不動産登記など、遺言の内容に応じた手続きへの対応が必要です。
なお、当事務所では、親族が遺言執行者となり、具体的な相続手続きや不動産登記について司法書士へご依頼いただくケースもあります。
不動産や相続手続きを任せたいなら司法書士
司法書士は、預貯金などの相続手続きに加え、不動産がある場合には登記にも対応できるため、遺言執行者の選択肢になります。
一方、相続人同士で遺産分割や遺留分などをめぐる争いが生じた場合、司法書士が相続人の代理人として交渉することはできません。相続トラブルが予想される場合は、弁護士を遺言執行者に指定することも検討しましょう。
相続トラブルが予想されるなら弁護士
相続人同士の関係が良くない場合や、特定の人に多くの財産を残すなど、遺留分をめぐるトラブルが予想される場合は、弁護士を遺言執行者に指定する方法があります。
弁護士は相続に関する交渉や訴訟にも対応できるため、相続発生後に紛争が生じる可能性を考慮して遺言執行者を選びたい場合の候補になります。
税務を重視するなら税理士、長期的に任せたいなら信託銀行
相続税が発生する可能性が高いなど、税務面を重視する場合は、税理士を遺言執行者に指定することもできます。遺言の作成段階から財産評価や相続税について相談したい場合にも選択肢になります。
また、遺言書の作成支援や保管から、相続発生後の遺言執行まで長期的なサービスを希望する場合は、信託銀行などを利用する方法もあります。
なお、誰を遺言執行者に指定した場合でも、登記や相続税申告などを専門家へ依頼すれば、別途報酬が必要になることがあります。また、専門家自身が遺言執行者となる場合も、これらの業務が遺言執行報酬に含まれるかは依頼先によって異なります。
遺言執行者に頼めることと相続税申告の注意点
遺言執行者への報酬が妥当かを判断するには、金額だけでなく「どこまでの手続きを任せられるのか」を確認することも大切です。遺言執行者は遺言の内容を実現する役割を担いますが、相続に関するすべての手続きを行うわけではありません。
遺言執行者に任せられる業務の範囲
遺言執行者は、預貯金の解約や財産の引渡し、不動産などに関する手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な業務を行います。
一方、相続税申告や相続人同士の紛争対応などは、遺言執行とは別の業務です。また、司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に指定した場合でも、どこまでの手続きが遺言執行報酬に含まれるかは依頼内容によって異なります。
そのため、報酬を比較するときは金額だけではなく、どの手続きまで対応してもらえるのか、別途費用が必要となる業務はないかまで確認することが大切です。
遺言執行者は相続税の申告をしてくれますか?
相続税の申告・納付は、遺言執行者としての職務には含まれません。
相続税の申告・納付義務は、原則として相続や遺贈によって財産を取得した人に生じます。そのため、遺言の内容を実現する遺言執行者の職務とは分けて考える必要があります。
また、相続税の申告書作成や税務代理などは税理士業務です。相続税の申告が必要な場合は、財産を取得した相続人や受遺者が、必要に応じて税理士へ依頼します。
なお、遺言執行者自身が税理士であっても、遺言執行者として指定されたことだけで相続税申告まで依頼したことにはなりません。申告も依頼する場合は、別途、業務内容や報酬を確認しておきましょう。
相続税の申告期限は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。相続や遺贈によって財産を取得した人は、遺言執行者による手続きとは別に、相続税申告が必要かどうかを早めに確認しておくことが大切です。
遺言作成時に専門家へ確認しておきたいこと
専門家を遺言執行者に指定する場合は、報酬額だけではなく、次の点も確認しておきましょう。
遺言書は、作成すること自体が目的ではありません。自分が亡くなった後に、遺言の内容を実際に実現できる体制まで考えておくことが大切です。
よくある質問・Q&A
| Q1. 遺言執行者の報酬は誰が払うのですか? |
| A1. 遺言執行者の報酬など、遺言の執行に必要となる費用は、原則として相続財産から負担します。民法1021条でも、遺言の執行に関する費用は相続財産の負担と定められています。 |
| Q2. 遺言執行者を家族にした場合、報酬なしでもよいですか? |
| A2. 家族や親族を遺言執行者に指定し、無報酬とすることも可能です。ただし、財産目録の作成や金融機関での手続きなど、一定の負担があるため、業務量も踏まえて検討するとよいでしょう。 |
| Q3. 遺言書に遺言執行者の報酬を書いていなかった場合はどうなりますか? |
| A3. 報酬の記載がないからといって、必ず無報酬になるわけではありません。民法1018条では、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情を考慮して、報酬を定めることができるとされています。 |
| Q4. 遺言執行者の報酬はいつ支払いますか? |
| A4. 遺言や契約などで支払時期を定めている場合は、その内容に従います。特段の定めがない場合は、原則として遺言執行の業務を終えた後に報酬を請求することになります。 |
| Q5. 指定した遺言執行者を後から変更できますか? |
| A5. 遺言者が生前であれば、遺言を書き直すなどして遺言執行者の指定を変更できます。相続開始後に遺言執行者が辞任するには家庭裁判所の許可が必要で、解任する場合も家庭裁判所への請求が必要です。 |
遺言執行者の報酬相場を確認して、依頼先を検討しよう
遺言執行者の報酬には法律で定められた一律の金額はなく、財産額や財産の種類、手続きの内容、依頼先などによって異なります。専門家に依頼する場合は、報酬額だけでなく、どこまでの業務が含まれているのか、実費や他の専門家への依頼費用が別途かかるのかまで確認しておくことが大切です。
また、遺言執行者には家族や親族を指定することもできますが、財産目録の作成や預貯金の解約など一定の負担が生じます。財産の内容や家族関係、必要となる手続きに応じて、司法書士や弁護士などの専門家への依頼も検討するとよいでしょう。
2004年の創業以来、累計受託件数12万5,000件以上の実績を重ね、日本全国での相続案件受託件数No.1の「nocos(NCPグループ)」では、遺言書の作成から遺言執行、相続登記まで幅広くサポートしています。遺言執行者の選び方や報酬についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。






