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相続の基礎知識

車の名義変更(相続)はどうする?手続きの流れと必要書類を解説

車の名義変更(相続)はどうする?手続きの流れと必要書類を解説

相続が発生した際、預貯金や不動産だけでなく、自動車も相続財産に含まれます。しかし、「車の名義変更は本当に必要なのか」「どのように進めればよいのか」と悩まれる方は少なくありません。名義変更をせずにそのままにしておくと、売却や廃車ができないだけでなく、事故や税金の面で思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
本記事では、亡くなった方の車の名義変更が必要となる理由から、手続きの流れや必要書類、依頼先の選び方まで、状況に応じて分かりやすくご案内します。

この記事を要約すると

  • 相続した車は、取得者を決めたうえで名義変更を行う必要があります。車検証で所有者を確認し、遺言や遺産分割で承継者を確定させた後、必要書類を揃えて手続きを進めることが重要です。
  • 車の名義変更は、所有者が確定した日から15日以内に申請する必要があります。名義を変更しないままでは売却や廃車ができず、税金や事故時のトラブルにつながるため、早めの対応が大切です。
  • 名義変更は自分でも可能ですが、手間や時間を考えると行政書士やディーラーへの依頼も有効です。相続人が多い場合や手続きに不安がある場合は、専門家に任せることでスムーズに進められます。

1. 車の名義変更(相続)は必要?義務と放置リスク

1-1. 名義変更は実質的に必要な手続き

亡くなった方が所有していた自動車は、相続の開始と同時に相続人全員の共有財産となります。

そのため、最終的に誰がその車を取得するのかを決めたうえで、名義変更を行う必要があります。

「名義変更は義務なのか」と疑問に思われる方も多いですが、所有者が変わった場合には移転登録の申請が義務とされています。

相続の場合も、取得者が確定した後は名義変更を行う必要があります。名義が亡くなった方のままでは、売却や廃車といった手続きを進めることができません。

また、日常的に使用する場合でも、名義は整理しておくことが大切です。他の財産と同様に、相続手続きの中で整理すべきものと考えておきましょう。

このように、車の名義変更は単なる形式的な手続きではなく、相続後の利用や処分を進めるための前提となる重要な手続きです。

1-2. 移転登録の期限と法的な位置づけ

自動車の名義変更は、「移転登録」と呼ばれる手続きによって行われます。

この移転登録については、道路運送車両法第13条において、新しい所有者は「その事由があった日から15日以内」に申請しなければならないと定められています。

ここでいう「その事由があった日」は、売買などの場合には契約日を指しますが、相続の場合は考え方が異なります。亡くなった時点では自動車は相続人全員の共有となり、まだ特定の一人に帰属しているわけではありません。

そのため、遺産分割協議や遺言によって取得者が決まった日が、この起算点になると考えられます。したがって、まずは取得者を確定させることが手続きの出発点となります。

1-3. 名義変更をしないと起こるトラブル

名義変更をせずに車を放置していると、さまざまな不都合が生じます。

まず、車を売却したり廃車にしたりすることができません。名義が故人のままでは手続きが進められないため、結果として車を処分できない状態になります。

また、車検や税金の面でも問題が生じます。

自動車税の納税通知書は旧所有者宛に送られるため、管理が不十分だと納付漏れにつながるおそれがあります。税金が未納の状態では車検を受けることもできません。

さらに、事故が起きた場合のリスクも見過ごせません。保険の名義変更が行われていないと、十分な補償を受けられない可能性があります。

加えて、相続人が複数いる場合には、「誰が使うのか」「勝手に処分してよいのか」といったトラブルの原因にもなります。こうした問題を避けるためにも、車の名義変更は早めに進めておくことが大切です。

2. 車の名義変更(相続)の全体の流れ

2-1. 最初に確認すべき「所有者」

手続きを進めるにあたって、まず確認しておきたいのが「その車の所有者が誰になっているか」です。これは車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄を見ることで確認できます。

車検証の見方については、国土交通省の見本も参考になります。

参照:国土交通省 自動車検査証(車検証見本) 

車検証を確認した際に、「所有者」の欄がディーラーや信販会社の名義になっている場合は、所有権留保が設定されている状態です。

これは、ローンを完済するまでの間、販売会社等が所有者となり、購入者は使用者として車を利用する仕組みです。

この場合は、そのままでは名義変更ができないため、残債の整理や所有権留保の解除を行ったうえで手続きを進める必要があります。

この確認によって、名義変更の進め方や必要となる手続きが変わります。最初にしっかり確認しておきましょう。

2-2. 新しい所有者の決め方

次に行うのが、その車を誰が取得するのかを決めることです。

遺言書がある場合には、その内容が優先されます。

特定の相続人に自動車を取得させる旨が記載されていれば、その人が所有者となります。この場合、遺産分割協議は不要です。

一方、遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、誰が取得するのかを決めます。

決定した内容は、後の手続きに備えて書面にまとめておく必要があります。

なお、自動車を複数人の共有名義とすることも可能ですが、将来的に売却や廃車を行う際には共有者全員の合意が必要となるため、手続きが複雑になりやすい点に注意が必要です。

特別な事情がない限りは、一人の相続人が取得する形で整理しておくことをおすすめします。

2-3. 実際の手続きの流れ

所有者が決まったら、具体的な名義変更の手続きに進みます。

まず、保管場所が変わる場合には車庫証明を取得します。

これは新しい所有者が車を保管する場所を証明するもので、管轄の警察署で申請します。取得までに数日かかるため、早めに準備しておくとスムーズです。

その後、必要書類をそろえて、車の使用場所を管轄する運輸支局で名義変更の手続きを行います。窓口での案内に従って進めれば、当日中に新しい車検証が交付されます。

なお、軽自動車の場合は手続き先が異なり、軽自動車検査協会で手続きを行います。また、普通自動車に比べて必要書類が簡略化されている点も特徴です。

このように、流れ自体はシンプルですが、事前の確認と準備が手続きを円滑に進めるポイントとなります。

3. 必要書類をパターン別に整理

3-1. 基本的に必要となる書類

名義変更の手続きでは、事前にいくつかの書類を準備する必要があります。

主なものは次のとおりです。

① 事前に準備が必要な書類

【戸籍謄本(全部事項証明書)一式または法定相続情報一覧図】

亡くなった方の死亡の事実および相続人全員との関係を確認するために必要です。戸籍を取得する場合には、出生から死亡までの連続した戸籍や、改製原戸籍が求められます。

なお、法定相続情報一覧図を利用する場合は、戸籍一式の提出を省略することができます。

【印鑑証明書】

遺産分割協議を行う場合には、相続人全員分が必要となります。いずれも発行後3ヶ月以内のものが求められるため、取得のタイミングには注意が必要です。

【車検証(自動車検査証)】

現在の所有者や車両情報を確認する基本書類です。なお、有効期間が過ぎている場合は、そのままでは手続きを進められないため、事前に車検を受ける必要があります。

【車庫証明書】

新しい所有者の保管場所を証明する書類です。保管場所が変わる場合に必要となります。

【遺産分割協議書または遺言書】

誰がその車を取得するのかを証明する書類です。

② 当日手続きで使用する書類

以下は運輸支局の窓口やホームページで入手する書類で、当日の手続き時に記入・提出します。

  • 申請書
  • 手数料納付書

これらは基本となる書類ですが、相続人の人数や取得方法によって追加で求められるものもあります。次の項目で、パターンごとの違いを整理していきます。

3-2. 相続パターン別の違い

必要書類は、相続の形によって変わります。主な違いは次のとおりです。

① 相続人が1人の場合

  • 遺産分割協議書は不要
  • 戸籍により単独相続であることを証明して手続きを行います

② 相続人が複数で、そのうち1人が取得する場合

  • 遺産分割協議書が必要
  • 相続人全員の署名と実印の押印が求められます

③ 相続人全員で共有する場合

  • 相続人全員の印鑑証明書が必要
  • 将来の処分には全員の合意が必要になります

このように、相続人の人数や取得方法によって準備すべき書類は異なります。複数人が関わる場合は、書類の取りまとめにも時間がかかるため、早めに方向性を決めておくことが大切です。

3-3. 簡略化できるケース

一定の条件を満たす場合には、必要書類を簡略化できることがあります。

代表的なケースは次のとおりです。

① 自動車の評価額が100万円以下の場合

車の評価額が100万円以下である場合には、「遺産分割協議書」に代えて、「遺産分割協議成立申立書」と呼ばれる書式を用いて手続きを行うことが認められています。

この場合、相続人全員の実印押印が不要となるため、手続きの負担を軽減できます。

ただし、査定書などにより評価額が100万円以下であることを証明する必要があります。

実際の記載方法については、運輸局が公表している記載例を参考にするとイメージしやすくなります。

参照:運輸局 遺産分割協議成立申立書 

② 軽自動車の場合

軽自動車については、普通自動車とは異なり、相続に関する書類の提出が求められない場合があります。

そのため、戸籍や遺産分割協議書を用意せずに手続きを進められるケースもあります。ただし、誰が取得するのかは事前に明確にしておくことが大切です。

このように、条件によっては手続きを簡略化できる場合があります。ただし、適用の可否は個別の事情によって異なるため、運輸支局の案内を確認するなどして進めることが大切です。

4. 相続後の対応とケース別手続き

4-1. そのまま乗り続ける場合

相続した車を引き続き使用する場合は、名義変更に加えて保険の手続きも忘れずに行う必要があります。

特に任意保険は、契約者や被保険者の名義が亡くなった方のままになっている場合、事故時に十分な補償が受けられない可能性があります。

そのため、車の名義変更が済んだら、速やかに保険会社へ連絡し、契約内容の変更や引き継ぎを行います。家族間であれば等級を引き継げる場合もありますので、条件を確認しておくとよいでしょう。

また、自動車税についても、新しい所有者に課税されることになります。名義変更後は納税通知書の送付先も変わるため、適切に管理できる状態にしておくことが大切です。

4-2. 売却する場合

相続した車を売却する場合は、第3章で説明した名義変更に必要な書類一式を準備したうえで、手続きを進めることになります。これらに加えて、売却先によっては譲渡証明書などの提出が求められることもあります。

手続きとしては、相続人がその車を取得したうえで、第三者へ移転する形で進めます。あらかじめ売却先が決まっている場合には、これらの手続きをまとめて申請できることもあります。

亡くなった方の名義のままでは売却手続きは進められないため、売却を予定している場合でも、相続手続きとして整理しておくことが必要です。

4-3. 廃車にする場合

車を使用せず処分する場合は、廃車手続きを行います。

廃車には、完全に解体して登録を抹消する「永久抹消」と、一時的に使用を停止する「一時抹消」があります。

いずれの方法を選ぶ場合でも、原則として相続人の名義に変更してから手続きを行う必要があります。亡くなった方の名義のままでは、廃車の手続きも進めることができません。

廃車の際には、解体業者への依頼やナンバープレートの返納など、通常の名義変更とは異なる手順も含まれます。事前に流れを確認し、必要書類を整えておくことが大切です。

4-4. 特殊ケースへの対応

通常の流れでは進められないケースもあります。代表的な例を確認しておきましょう。

① ローンが残っている場合

車の所有者が販売店や信販会社となっている場合は、所有権留保が設定されている状態です。この場合、そのままでは名義変更ができません。

まずはローンの残債を確認し、完済したうえで、販売店や信販会社に所有権留保の解除手続きを依頼します。

必要書類の案内を受けて手続きを進めることで、名義変更が可能な状態になります。この解除手続きが完了して、はじめて相続による名義変更へ進むことができます。

② 相続放棄をした場合

相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

そのため、自動車の名義変更に関与することはできず、他の相続人で手続きを進めることになります。

このように、ケースによって手続きの進め方が異なるため、該当する状況を確認したうえで対応を検討することが大切です。

5. 自分でやる?誰に依頼する?判断のポイント

5-1. 自分で手続きする場合

車の名義変更は、ご自身で行うことも可能です。

最大のメリットは費用を抑えられる点で、必要となるのは登録手数料や証明書の取得費用など実費に限られます。

書類の内容も一つひとつは難解なものではないため、時間をかけて確認すれば進めることはできます。

一方で、戸籍の収集や書類の作成、警察署での車庫証明の取得、運輸支局への訪問など、複数の手続きを平日に行う必要がある点には注意が必要です。

また、書類に不備があると再提出となり、何度も足を運ぶことになる場合もあります。

そのため、時間に余裕があり、手続きを一つずつ進めていける方には適していますが、忙しい方にとっては負担を感じやすい方法といえるでしょう。

5-2. 依頼できる相手と特徴

手続きを自分で行うのが難しい場合は、専門家や事業者に依頼することもできます。

行政書士は、自動車の名義変更手続きを業務として扱っており、必要書類の案内から申請まで一括して対応してもらえます。書類の不備によるやり直しを避けやすく、安心して任せられる点が特徴です。

一方、ディーラーや中古車買取業者でも、名義変更の手続きを代行してくれることがあります。特に売却を前提としている場合には、手続きとあわせて一括で任せられるため、負担を軽減しやすい方法です。

それぞれ、専門性や対応範囲に違いがあるため、「どこまで任せたいか」に応じて選ぶことが大切です。

5-3. 依頼すべきケースの判断基準

次のいずれかに当てはまる場合は、専門家への依頼を検討するとよいでしょう。

  • 相続人が複数おり、書類の取りまとめや調整が必要な場合
  • 平日に時間を確保することが難しい場合
  • 戸籍の収集や書類作成に不安がある場合
  • 他の相続手続きとあわせて進めたい場合

一方で、相続関係が単純であり、時間にも余裕がある場合には、ご自身で手続きを行うことも可能です。ご自身の状況に応じて、無理のない方法を選ぶことが大切です。

6. よくある質問

Q1. 亡くなった人の車の名義変更は義務ですか?
A1. 法律上は「その事由があった日から15日以内」に移転登録を申請する必要があります。相続では取得者が決まった日が起算点とされます。亡くなった方の名義のままでは、放置すると売却や廃車ができないなど支障が生じるため、早めの対応が必要です。
Q2. 車の名義変更は自分でできますか?
A2. ご自身で行うことは可能です。必要書類を揃え、運輸支局で手続きを行えば完了します。ただし、戸籍収集や平日の手続きが必要となるため、時間や手間を考慮して無理のない方法を選ぶことが大切です。
Q3. 名義変更をしないまま乗り続けることはできますか?
A3. 乗り続けること自体は可能ですが、適切な状態とはいえません。所有者が変わった場合には移転登録の申請が求められており、相続の場合も取得者が確定した後は名義変更を行う必要があります。名義を変更しないままでは、売却や廃車ができないほか、事故時や保険の面でも不利益が生じるおそれがあります。
Q4. 亡くなった人の車の名義変更は誰に依頼すればよいですか?
A4. 名義変更は自分でも行えますが、行政書士やディーラーなどに依頼することも可能です。行政書士は書類作成から申請まで幅広く対応しており、売却を予定している場合はディーラーや買取業者にまとめて依頼できることもあります。状況に応じて選ぶことが大切です。
Q5. 相続した車をすぐ売却する場合も名義変更は必要ですか?
A5. はい、必要です。相続した車を売却する場合でも、いったん相続人が取得したうえで第三者へ移転する手続きが必要になります。売却先が決まっている場合は、これらをまとめて申請できることもありますが、相続関係の証明書類は必ず求められます。

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正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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