この記事を要約すると
- 除籍謄本とは、戸籍に記載されていた人が死亡や婚姻、転籍などにより全員その戸籍からいなくなった後の戸籍の内容を証明する書類です。現在も在籍者がいる戸籍を証明する戸籍謄本とは異なり、過去の戸籍を示します。また、除籍抄本が特定の人の情報のみを記載したものなのに対し、除籍謄本は戸籍に記載されていた全員の情報が記載されます。
- 戸籍への反映は届出の受理後すぐではなく、処理を経て行われます。一般的には数日から1週間程度が目安ですが、本籍地以外での届出や繁忙期にはさらに時間がかかる場合があります。
- 除籍謄本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続人を正確に確定するために必要です。現在の戸籍だけでは過去の身分関係が分からないため、戸籍一式の収集が求められます。
1. 除籍謄本とは
1-1. 除籍謄本の基本的な意味
除籍謄本とは、戸籍に記載されている人が全員いなくなった後の戸籍の内容を証明する書類です。
戸籍は、出生や婚姻、死亡などの身分関係を記録するものであり、通常は家族単位で編成されています。この、戸籍に記載されている人が、死亡や婚姻、転籍などによってすべて抜けると、その戸籍は「除籍」となります。
ここでいう除籍は、特別な申請によって作られるものではなく、戸籍の状態を表すものです。
たとえば、結婚や本籍の移動といった通常の手続きの結果として、元の戸籍に誰も残らなくなれば、その時点で除籍となります。
除籍となる主なケースは、次のとおりです。
このように、家族全員が別の戸籍へ移動した結果として、戸籍が閉じられる点が特徴です。そして、この除籍となった戸籍の写しが「除籍謄本」として交付されます。
1-2. 全部事項証明書との関係(名称の違い)
戸籍は現在では電算化(コンピュータ化)されているため、役所で取得する際には「全部事項証明書」や「個人事項証明書」といった名称で案内されることがあります。
一般的には、次のように対応しています。
名称は異なりますが、記載内容や役割に大きな違いはありません。
相続手続きでは従来どおり「戸籍謄本」「除籍謄本」という言葉が使われることも多いため、両方の呼び方を押さえておくと安心です。
1-3. 除籍謄本の見本
東京都北区公式ウェブサイトより引用
形式は自治体によって多少異なりますが、基本的な構成は共通しています。
確認しておきたい主なポイントは、次のとおりです。
実際の手続きでは、これらの記載内容をもとに相続関係を確認していくことになります。
2. 戸籍謄本・改製原戸籍・抄本との違い
2-1. 戸籍謄本との違い
戸籍謄本と除籍謄本は、いずれも戸籍の内容を証明する書類ですが、その戸籍が「現在のものか」「過去のものか」という点で区別されます。
戸籍謄本は、その時点で誰かが在籍している戸籍について交付されるものです。
たとえば、夫婦や親子が同じ戸籍に記載されている状態であれば、その戸籍は現在の戸籍として扱われ、戸籍謄本として取得します。
一方で、除籍謄本は、戸籍に記載されていた人が、死亡や婚姻、転籍などによって全員その戸籍からいなくなった後の戸籍について交付される書類です。
戸籍として新たな記載がされることはありませんが、過去の身分関係を証明する重要な資料として保存されています。
このように、両者の違いは記載内容そのものではなく、戸籍の状態にあります。
内容の構成自体は似ているため、見た目だけでは区別がつきにくいこともありますが、どの時点の戸籍を示しているのかという点が異なります。
以上を整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 戸籍謄本 | 除籍謄本 |
|---|---|---|
| 戸籍の状態 | 現在も誰かが在籍している | すでに全員がいなくなっている |
| 位置づけ | 現在の戸籍 | 過去の戸籍 |
| 交付される書類 | 戸籍謄本(全部事項証明書) | 除籍謄本(除籍全部事項証明書) |
2-2. 改製原戸籍との違い
除籍謄本と混同されやすいものに、「改製原戸籍」があります。どちらも過去の戸籍である点は共通していますが、過去になった理由が異なります。
改製原戸籍とは、法改正や戸籍の様式変更などによって戸籍が作り替えられた際に、それ以前の戸籍として保存されるものです。
たとえば、手書きの戸籍からコンピュータ化された戸籍へ移行する際などに、従来の戸籍が改製原戸籍として残されます。
これに対して、除籍謄本は、戸籍に記載されていた人が全員いなくなったことによって、その戸籍が閉じられたものです。
つまり、改製原戸籍が「制度の変更」を理由として過去の戸籍になるのに対し、除籍謄本は「人の移動や死亡」を理由として過去の戸籍になる点に違いがあります。
この違いを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 除籍謄本 | 改製原戸籍 |
|---|---|---|
| 過去になった理由 | 人が全員いなくなった | 制度変更により作り替えられた |
| 主な発生原因 | 死亡・婚姻・転籍など | 法改正・電算化 |
| 位置づけ | 人の動きによる過去戸籍 | 制度上の変更による過去戸籍 |
なお、相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの経歴を確認するために、除籍謄本と改製原戸籍のいずれも収集するのが一般的です。どちらか一方だけでは足りず、戸籍の流れを通して確認することが重要になります。
2-3. 謄本と抄本の違い
戸籍関係の書類では、「謄本」と「抄本」という言葉もよく使われます。除籍謄本を理解するうえでは、この違いも押さえておくと混乱が少なくなります。
謄本とは、その戸籍に記載されている内容をすべて写したものをいいます。戸籍に記載されている全員分の情報が記載されているため、相続手続きでは原則としてこちらを使用します。
一方で抄本とは、戸籍に記載されている一部の人についてのみ抜き出したものです。
必要な人の情報だけを証明したい場合に用いられますが、戸籍全体の関係を確認することはできません。
この違いを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 謄本 | 抄本 |
|---|---|---|
| 記載範囲 | 戸籍に記載されている全員 | 一部の人のみ |
| 主な用途 | 相続手続きなど全体確認 | 故人の証明が必要な場合 |
| 相続での使用 | 原則こちらを使用 | 基本的には使用しない |
3. 除籍謄本は相続人を確定するために必要
3-1. 現在の戸籍だけでは相続人を確定できない理由
除籍謄本が必要となる最大の理由は、相続人が誰になるのかを正確に確認するためです。
相続では、誰が法定相続人になるのかを戸籍によって確認します。しかし、被相続人の現在の戸籍だけでは、その人のすべての身分関係を把握することはできません。
たとえば、過去に婚姻歴があり前の配偶者との間に子がいる場合や、養子縁組をしている場合などは、現在の戸籍だけでは確認できないことがあります。
このような見落としがあると、本来相続人となるべき人を除外したまま手続きを進めてしまうおそれがあります。
その結果、遺産分割協議が無効となり、手続きをやり直さなければならなくなる可能性があります。
そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を連続して確認し、相続人を漏れなく把握する必要があります。このとき、過去の戸籍である除籍謄本が不可欠となります。
3-2. 除籍謄本が必要になる具体的な場面
除籍謄本は、相続に関するさまざまな手続きで提出を求められます。代表的なものとしては、金融機関での預金解約や、不動産の名義変更(相続登記)があります。
また、相続税の申告が必要な場合にも、相続人の確認のために戸籍一式の提出が求められます。
これらの手続きでは、相続人全員の同意が前提となるため、まず相続人を確定する必要があります。
そのため、戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍を含めた一連の戸籍を提出し、相続関係を証明することが求められるのが一般的です。
4. 戸籍謄本に除籍が反映されるタイミング
戸籍に記載される内容は、死亡や婚姻、転籍などの届出が受理された後、本籍地の市区町村で処理され、戸籍に反映されます。
本籍地以外の市区町村に届出をした場合には、その市区町村から本籍地へ通知が送られ、本籍地の市区町村で戸籍への記載が行われます。
例えば、本籍地とは異なる住所地の市区町村に死亡届を提出した場合には、その市区町村から本籍地へ情報が送られたうえで、戸籍に反映されることになります。
戸籍への反映には一定の処理期間が必要となるため、届出の受理後すぐに最新の内容が戸籍謄本へ記載されるわけではありません。
一般的には、届出の受理から戸籍への反映までは、数日から1週間程度が目安とされています。ただし、本籍地以外の市区町村に届出をした場合や、繁忙期などには、さらに時間がかかることもあります。
そのため、戸籍は届出後すぐではなく、1週間程度空けてから取得するのが一つの目安です。念のため、本籍地の市区町村に反映状況を確認すると確実です。
| 手続きの流れ | 内容 |
|---|---|
| ①届出 | 死亡届・婚姻届け・転籍届 |
| ②受理 | 市区町村が内容を確認し受理 |
| ③戸籍処理 | 戸籍へ記載を反映するための事務処理 |
| ④反映完了 | 戸籍謄本に最新情報が記載される |
5. 除籍謄本の取得方法
除籍謄本は、戸籍謄本や改製原戸籍とあわせて、相続手続きに必要な戸籍一式として取得するのが一般的です。
2024年3月からは「戸籍の広域交付制度」により、本籍地以外の市区町村でもまとめて取得できるケースがあります。
5-1. 戸籍の広域交付制度による取得
2024年3月から開始された戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本や除籍謄本などを取得できるようになりました。
この制度を利用すると、複数の本籍地にまたがる戸籍を、最寄りの市区町村でまとめて取得できるため、相続手続きにおいては効率的な方法です。
一方で、請求できる人の範囲や取得できる戸籍の種類などには一定の条件があります。制度の詳しい内容や注意点については、以下の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
5-2. 本籍地での取得(窓口・郵送)
広域交付を利用しない場合や、対象外の戸籍がある場合は、本籍地の市区町村に対して個別に請求します。
請求方法は「窓口請求」と「郵送請求」があります。
(1)窓口請求の場合
- 本籍地の役所の窓口で、戸籍の請求書に必要事項(本籍地・筆頭者氏名・必要な証明書の種類・請求者情報など)を記入する
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)を提示し、手数料を支払う内容に問題がなければ、一般的にその場で交付される
(2)郵送請求の場合
- 本籍地の市区町村のホームページから申請書を入手し、必要事項を記入する
- 本人確認書類の写し(運転免許証など)を用意する
- 手数料分の定額小為替を郵便局で購入する
- 返信用封筒(切手貼付・送付先記載)を準備する
- 上記をまとめて本籍地の役所へ郵送する
郵送の場合は、役所での処理期間に加えて往復の郵送日数がかかるため、手元に届くまでには少なくとも1週間程度、自治体や時期によっては2~3週間程度かかることもあります。
なお、本籍地が分からない場合は、住民票を取得することで現在の本籍を確認することができます。ただし、住民票で確認できるのはあくまで現在の戸籍の本籍に限られます。
過去の戸籍(除籍や改製原戸籍)については、戸籍の附票や現在の戸籍の記載を手がかりに、本籍の移動履歴をたどりながら遡って確認していく必要があります。
なお、戸籍の収集は手間や時間がかかるだけでなく、戸籍の仕組みを理解しながら進める必要もあるため、判断に迷う場面も少なくありません。
不安な場合や手続きを効率的に進めたい場合は、司法書士などの専門家へ依頼することも一つの方法です。
6. よくある質問
| Q1. 除籍謄本と戸籍謄本はどちらを取得すればよいですか? |
| A1. 相続手続きでは、現在の戸籍だけでなく過去の戸籍も確認する必要があります。そのため、戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍もあわせて取得します。 |
| Q2. 戸籍謄本に除籍が反映されるのはいつですか? |
| A2. 届出の受理後、戸籍への反映には一定の処理期間が必要です。一般的には数日から1週間程度が目安ですが、本籍地以外での届出や繁忙期はさらに時間がかかることがあります。 |
| Q3. 除籍謄本は誰でも取得できますか? |
| A3. 誰でも取得できるわけではなく、本人や配偶者、直系親族など一定の関係がある人に限られます。相続手続きの場合は、相続人であれば取得可能です。 |
| Q4. 除籍謄本はどこで取得できますか? |
| A4. 本籍地の市区町村で取得するほか、2024年3月からは広域交付制度により、本籍地以外の市区町村でも取得できる場合があります。 |
| Q5. 除籍謄本が取得できない場合はどうすればよいですか? |
| A5. 保存期間の経過や火災などにより戸籍が取得できない場合には、その戸籍が取得できないことを示す証明書が発行されます。こうした証明書や他の戸籍など、入手可能な資料をできる限り集めて、相続関係を補足的に証明していくことになります。 |
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