nocosのコラム

相続の基礎知識

相続で音信不通の兄弟がいる場合はどうなる?手続きの流れと対処法をわかりやすく解説

相続で音信不通の兄弟がいる場合はどうなる? 手続きの流れと対処法をわかりやすく解説

相続のご相談では、「兄弟と長年連絡を取っていない」「音信不通のまま手続きを進められるのか」といったお悩みを伺うことがあります。
相続手続きの中でも特に重要な遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要となります。そのため、一人でも連絡がつかない相続人がいると、不動産の名義変更や預貯金の解約といった様々な手続きを進めることができなくなってしまいます。不安を抱えたまま、何年も手続きが止まってしまうケースも少なくありません。そのまま時間が過ぎてしまうと、相続税の申告が遅れてしまったり、不動産が名義変更できず管理の負担や過料の発生など、思わぬトラブルにつながることもあります。
本記事では、音信不通の兄弟がいる場合に何が問題となるのか、まず何を調べればよいのか、連絡が取れないままでも相続を進める方法など、実務で役立つポイントを司法書士の立場から分かりやすくご案内します。

この記事を要約すると

  • 兄弟が音信不通でも相続手続きを行う必要があります。しかし、遺産分割協議には相続人全員の同意が必要です。この場合、まず戸籍・附票で所在を確認し、それでも連絡不能の場合は不在者財産管理人や失踪宣告を検討するなどで、手続きを進める方法を取ります。
  • 相続手続きを放置すると相続関係が複雑化し、不動産管理費や固定資産税の負担が続いたり、相続登記を3年以上しない場合は過料対象となる可能性もあります。期限がある手続きもあるため、放置は避けるべきです。
  • 兄弟の死亡が自治体から自動的に通知される仕組みはなく、戸籍の収集によって初めて死亡を知るケースも少なくありません。疎遠な場合は情報が届かないため、戸籍確認を行うことが重要です。

1. 音信不通の兄弟がいると相続はどうなる?知っておきたい基本

相続手続きのご相談では、「兄弟と長く連絡を取っていない」「生存しているのかも分からない」というご不安を伺うことが珍しくありません。

家族構成や関係性により状況はさまざまですが、相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、相続手続きの進行が大きく妨げられてしまいます。

1-1.遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある

遺産分割協議の流れ

相続手続きでは、不動産や預貯金などの財産をどのように分けるのかを話し合う「遺産分割協議」を行います。
この協議には 家庭裁判所で相続放棄が受理された者を除き、相続人全員の同意が必要です。

そのため、相続人のうち一人でも連絡が取れない場合は、不動産の名義変更や預貯金の解約など一連の相続手続きを進めることができません。

また、行方不明の相続人を除外して協議を行ったり、自分だけ先に手続きを完了させることもできません。

1-2.相続手続きを進めるには “相続人の確定” と “連絡先の把握” が必須

相続手続きを円滑に進めるためには、まず最初に「相続人は誰なのか」を正確に確定することが欠かせません。前述のとおり、遺産分割協議には相続人全員の同意が必要になるためです。

そして、相続人が確定した後は、相続人間でどのように連絡を取るか考える必要があります。

連絡先が分からなければ協議そのものが始められず、相続手続きを進めることができなくなってしまうからです。

次の章では、音信不通の兄弟がいるとき、どのように相続人を確定し、どうやって連絡を試みるのかを、具体的な手順に沿って解説していきます。

2. 音信不通の兄弟とはどうやって連絡を取る?まず行うべき調査と手順

音信不通の兄弟がいる状況では、そもそもどうやって連絡を取ればよいのか、疑問に感じられる方も多いと思います。

まずは、公的な記録を丁寧にたどりながら、連絡につながる情報を一つずつ確認していくことが大切です。

ここをしっかりと確認しておくことが、以後の手続きを滞らせないための重要なステップとなります。

2-1.まずは“相続人が誰なのか”を正確に確定することが第一歩

相続手続きでは、音信不通かどうかにかかわらず、相続人の確定が最初に必ず必要になります。

遺産分割協議は相続人全員で行うため、誰が相続人なのかを誤ると、その後の手続きがすべて無効になってしまう恐れがあるからです。

そのため、最初に行うのが、被相続人の出生から死亡までの「連続した戸籍」の収集です。

これにより、子・親・兄弟姉妹など、法律上の相続人が正確に判明します。

特に、音信不通の兄弟がいるケースでは、兄弟がすでに亡くなっている可能性、その子が相続人になっている可能性もあるため、戸籍の確認を早期にしっかりと行いましょう。

そして、相続人が確定したら、次に必要になるのが「どうやってその人と連絡を取るか」です。ここからが、音信不通の場合に特に重要な点になります。

2-2.戸籍の附票で “現在の住所” を確認し、連絡の手がかりをつかむ

相続人が確定したら、次は連絡手段につながる情報を確認します。その中心となるのが 「戸籍の附票ふひょう です。

附票には、その戸籍に在籍している期間中の住所の履歴がすべて記録されており、最新の住民票上の住所・過去の住所が確認できます。

そのため、音信不通の兄弟の現在の本籍地の戸籍の附票を取得することで、現在どこに住民票を置いているのか、という重要な手掛かりを得ることができます。

〔戸籍の附票の取得について〕
・取得先:相続人の本籍地の役所
・手数料:1通300円ほど
・必要書類:相続関係がわかる戸籍一式、本人確認書類

もっとも、「住所は分かったが、実際には住んでいない」というケースも珍しくありません。

附票は “住所を知るための出発点” ではありますが、次のステップで「実際にその住所へ連絡を試みる」流れに進みます。

2-3.住所が分かったら、まずは手紙で連絡を試みる

附票で最新の住民票上の住所が分かったら、次は書面での連絡を行います。

いきなり訪問すると警戒されてしまう可能性があるため、まずは手紙を送るのが一般的です。

(1)最初の手紙に記載する内容

  • 相続が発生したこと、手続きが必要であることを簡潔に伝える
  • 相続関係が分かる資料(相続関係説明図など)を添付する
  • 財産内容の詳細は記載せず、相続手続きが必要であることを伝える
  • 連絡先(電話番号やメールアドレス)を明記し、返答を促す

文面は丁寧かつ簡潔にまとめ、感情的な表現は避けます。また、簡易書留や内容証明郵便など、記録が残る方法で送付すると確実です。

相続人が手紙を受け取っても応答しない場合、弁護士を代理人に立てて交渉することも可能です。弁護士が代理で連絡を取り、相続手続きに応じてもらうよう説得します。

(2-1)手紙が届かない場合(返送されてくる場合)

宛先不明で返送されてきた場合は、

  • その住所には居住していない
  • 住民票異動が未完了
  • 建物が不存在

などが考えられます。

この場合は、次のような追加調査によって、別の連絡先につながる手掛かりを探していきます。

  • 転籍前の役所にも附票を請求する(本籍が複数回移動している場合)
    本籍が移動していると、複数の役所に附票が点在しているため、そこをたどることで手がかりを得られることがあります。
  • 古い郵便物・年賀状・メモなどの確認
    家族が保管していた郵便物やメモに、古い電話番号や旧住所が書かれていることもあり、意外な連絡先が見つかることがあります。
  • 共通の親族・知人への聞き取り
    疎遠な兄弟でも、いとこや友人が連絡を取っていることがあり、家族以外の情報が突破口になるケースもあります。

(2-2)手紙は届いたが返信がない場合

  • 家族や代理の者など本人以外の者が受け取り、本人に伝わっていない
  • 本人が開封していない
  • 内容に不安や抵抗を感じている

など、理由はさまざまです。

返信がない場合は

  • 別の連絡手段がないか再考する
  • 専門家名義での再通知を行う
  • 弁護士を代理人に立てて交渉をする
  • 家庭裁判所を利用した手続き(遺産分割調停や不在者財産管理人の選任申立てなど)への移行を検討する

ことになります。

(2-3)手紙が届き、返信があった場合

文書を送った結果、相手から返信が得られた場合は、相続手続きは大きく前に進みます。

まずは、相続手続きの現状や今後の流れについて連絡が取れた相続人本人と共有したうえで、相続人全員で、遺産分割協議に向けた今後の進め方や必要書類を整理していきましょう。

「連絡が取れたあと、具体的にどう進めるのか」について詳しく知りたい方は、以下の解説ページも参考にしてください。

3. 連絡がつかない兄弟がいる場合の制度

2章で見てきたとおり、戸籍や附票の確認、手紙の送付、追加調査などを行っても、それでも兄弟と連絡が取れないままというケースも少なくありません。

しかし、相続手続きは「連絡がつかないから進められない」で終わることはできません。

「できるだけの調査はしたが、それでも所在や生死が分からない」という状況になったときに検討されるのが、家庭裁判所の制度を使って相続を前に進める方法です。

音信不通の相続人がいる場合

ここでは、行方不明の兄弟がいる場合に検討される代表的な法的手続き

  • 不在者財産管理人
  • 失踪宣告

の2つをご紹介します。

3-1.不在者財産管理人の選任 ― 行方不明でも代理人を立てれば手続きできる

兄弟が行方不明で、住所確認や手紙による連絡でも反応が得られない場合、まず検討されるのが 不在者財産管理人ふざいしゃざいさんかんりにん」の選任です。

不在者財産管理人とは、行方不明の相続人の代わりに、相続手続きに必要な行為を行うために家庭裁判所から選ばれる人のことです。

不在者財産管理人が選任されると何ができる?

不在者財産管理人が選任されると、その管理人が行方不明の兄弟に代わり、相続に必要な一連の手続きを進められるようになります。

管理人は、行方不明者の利益を守る立場として遺産分割協議に参加し、必要に応じて協議書へ署名・押印することも可能です。

つまり、「兄弟と連絡が取れないために相続が止まっている」という状況を、管理人が代理として関わることで解消できる制度です。

管理人の候補者は誰になる?

不在者財産管理人は家庭裁判所が選任します。

候補者としては、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることが一般的です。

場合によっては親族が選ばれることもありますが、相続人同士の利害が複雑なケースでは、中立的な専門家が選任される場合が多くあります。

手続きや費用の詳細

不在者財産管理人の手続きの詳細については、以下の記事でも解説しています。

3-2.失踪宣告 ― 長期間、生死不明の場合に利用できる手続き

兄弟が長期間行方不明で、生死の確認がまったく取れない場合には、家庭裁判所へ「失踪宣告しっそうせんこく」を申し立てるという方法もあります。

失踪宣告は、一定期間にわたり生死不明の人を法律上「死亡」とみなす制度で、これにより相続人が確定し、遺産分割協議を通常どおり進めることが可能になります。

失踪宣告の利用が検討されるケース

失踪宣告が選択肢となる場面は、7年以上、生死不明の状態が続いている場合です。

行方不明期間が長く、今後も連絡が取れる見込みがないと判断されるケースでは、「不在者財産管理人」を選任しても根本的な解決にならないことがあります。

特に相続人の構成を早く確定しないと財産の管理・処分に支障が出る場合には、失踪宣告が検討されます。

ただし、「7年」という明確な要件があるため、利用のハードルはやや高く、状況によってはまず不在者財産管理人を選任しながら経過を見ていくこともあります。

失踪宣告が認められるとどうなる?

家庭裁判所が失踪宣告を認めると、行方不明の兄弟は法律上「死亡したもの」として扱われます。

その結果、相続人の範囲が確定し、遺産分割協議を通常どおり進められるようになります。

一方で注意点もあり、もし後日、本人の生存が判明した場合には、原則として相続財産の返還義務が生じる可能性があります。

そのため、財産の状況や家族構成、相続人同士の関係性などもふまえ、慎重に判断する必要があります。

手続きや費用の詳細

失踪宣告の手続きには、申立書・戸籍資料など一定の書類が必要となり、審理には時間を要することもあります。

また、家庭裁判所での公告手続きが行われるため、手続きの流れを複雑に感じる方も少なくありません。

必要書類・期間・費用などの詳細については、ノコスの解説記事「相続人が行方不明のときはどうする?手続きや対応方法を徹底解説」でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。

失踪宣告を選ぶべきか、不在者財産管理人を選任すべきかは、行方不明期間・財産内容・家族関係など複数の事情を総合的に判断する必要があります。

迷う場合は、早い段階で専門家へ相談されることをおすすめします。

4. 音信不通の兄弟がいるときの疑問と注意点

4-1.相続手続きを放置するとどうなる?

音信不通の兄弟がいるまま相続を進めずに放置すると、時間の経過とともに手続きは格段に複雑になります。

たとえば、相続人がさらに亡くなると相続関係が枝分かれし、戸籍の収集範囲も広がってしまいます。

また、不動産がある場合は負担が特に大きくなります。故人のまま名義では売却や融資の手続きができません。固定資産税や管理の負担が続いたり、老朽化による近隣トラブルが起きることもあります。

相続登記を行わず3年が経過すると過料が請求される可能性もあります。

4-2.行方不明でも役所から死亡連絡は来る?

兄弟が死亡しても、自治体から自動的に通知が届く制度はありません。

死亡の有無や住所の確認は、戸籍・附票などを取得して自分で調べる必要があります。

音信不通のまま状況を把握しないでいると、遺産分割協議の開始時期が遅れ、金融機関や不動産の手続きが長期化することがあるため注意が必要です。

4-3.相続税の期限は延びる?

音信不通の兄弟がいても、相続税申告の期限(相続開始から10か月)は原則として延長されません。

連絡が取れない相続人がいても、税務手続きは待ってはくれません。相続税の申告期限を意識せずに対応を先延ばしにすると、申告漏れや加算税につながるおそれがあります。

そのため、早期に相続人の調査を行い、連絡の取れない兄弟がいる場合は、戸籍や戸籍の附票による調査・書面での連絡といった対応を行いましょう。

そして、それでも解決しないときは不在者財産管理人の選任など家庭裁判所の制度を活用して、申告期限内に進められる体制を整えることが重要です。

5. よくある質問

Q1. 兄弟が音信不通のままですが、相続手続きは進められますか?
A1. 連絡が取れない相続人を除いて遺産分割協議を進めることはできません。まず戸籍や附票で所在を確認し、それでも不明な場合は不在者財産管理人や失踪宣告などの制度を利用して、協議を進める方法を検討します。
Q2. 不在者財産管理人と失踪宣告はどちらを利用すべき?
A2. 行方不明となっている期間や事情により選択が異なります。
行方不明期間が比較的短い場合…不在者財産管理人で代理人を立てる方法が一般的
7年以上生死不明の場合………失踪宣告を申し立てて「死亡」とみなし相続人を確定させる方法を検討
どちらにも注意点があるため、迷う場合は専門家へ相談することをおすすめします。
Q3. 兄弟が亡くなっている場合、公的機関から連絡はきますか?
A3. 相続人であっても、市区町村などの公的機関から死亡の連絡が自動的に来ることはありません。疎遠だった場合や家族間で連絡が途絶えていた場合には、戸籍を収集して初めて「知らないうちに相続が発生していた」と判明するケースも、実務上少なくありません。
Q4. 相続手続きを放置するとどうなりますか?
A4. 相続人同士の協議が進まなければ名義変更や解約手続きが滞り、不動産については管理負担や固定資産税が継続し、状況によっては過料の対象となる可能性もあります。さらに、相続税の申告が遅れれば延滞税などの負担が生じ、時間の経過とともに相続関係が複雑化するおそれもあります。放置は大きなリスクにつながるため、早めに手続きを進めることが大切です。
Q5. 行方不明の兄弟がいる場合、司法書士に依頼するとどこまで対応してくれますか?
A5. 戸籍収集、附票確認、住所調査などに加え、必要に応じて不在者財産管理人の申立て支援、相続登記まで一連の流れをサポートできます。相続人が多い場合や調査が難しいケースでは、専門家が関わることで負担が大幅に減ります。なお、相続人との交渉が必要な場合には弁護士、相続税の申告額必要な場合には税理士の関与も必要となります。

6. nocosにできること

nocosを運営するNCPグループは、司法書士・行政書士・税理士等の有資格者100名以上を要する、相続手続きに特化した専門集団です。

2004年の創業以来、累計受託件数10万件以上の実績を重ね、現在、日本全国での相続案件受託件数No.1※となっています。

全国の最寄りの事務所やご自宅へのご訪問、オンライン面談等で資格者が直接ご相談を承りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

正木 博をフォローする