この記事を要約すると
- 父親が亡くなった場合、法律上の親子関係がある異母兄弟は、ほかの子どもと同じ第1順位の相続人です。
- 異母兄弟本人が亡くなった場合、子どもや父母など先順位の相続人がいないときには、兄弟姉妹が相続人になります。
- 親の遺産は子ども同士で平等に分けますが、兄弟姉妹の遺産は、異母兄弟の法定相続分は父母が同じ兄弟姉妹の2分の1です。
異母兄弟にも相続権はある

異母兄弟に相続権があるかどうかは、「血の繋がりがあるか」「父親に認知されていたか」の2点で決まります。
| 異母兄弟に相続権がある場合 | 異母兄弟に相続権がない場合 |
|---|---|
| ・血の繋がりがある | ・血の繋がりがない(例:異母兄弟の母が亡くなった) |
| ・父親から認知されている | ・父親から認知されていない |
同じ父親の血を引く場合は、異母兄弟にも相続権が生じます。結婚していない内縁の妻との子供にも相続権が生じます。
ただし、母Aから生まれた自分と、母Bから生まれた異母兄弟がいて、母Aが亡くなった場合は異母兄弟に相続権は生じません。母Aと異母兄弟の間に血の繋がりがないためです。
また、父親が息子を認知していなければ相続権は生じません。例えば、父と愛人との間に子供ができて、愛人が子供の存在を隠していたなどのケースが該当します。
異母兄弟の相続順位は?
相続には法定相続人としての順位があり、次のように定められています。
第1順位:子ども(子どもが死亡している場合は孫)
第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪)
親が亡くなった場合、異母兄弟は「子ども」として相続権を取得します(参考:民法第887条第1項)。したがって、親の相続における異母兄弟の相続順位は、第1順位です。
父親が亡くなった場合、異母兄弟は母親を同じくする兄弟と同じ第1順位の相続人となり、相続権を持ちます。異母兄弟だからといって相続順位が低くなることはありません。
また、自分の兄弟が亡くなった場合、異母兄弟は第3順位の兄弟姉妹に該当します。
異母兄弟の相続割合はどのくらい?
異母兄弟の相続分は、「親の遺産を子どもとして相続する場合」と「兄弟姉妹の遺産を相続する場合」で異なります。
親の遺産では子ども同士の相続分は平等ですが、兄弟姉妹の遺産では、父母の一方だけを同じくする異母兄弟の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。
親の遺産を相続する場合

親の遺産を相続する場合、異母兄弟も含めて子どもの相続分は平等です。例えば、父親が亡くなり、配偶者と子ども2人(うち1人が異母兄弟)が相続人の場合は、以下のようになります。
| 続柄 | 相続の割合 | 遺産が1,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2(遺産全体の半分) | 500万円 |
| 子ども(あなた) | 1/4(遺産全体の半分の1/2) | 250万円 |
| 子ども(異母兄弟) | 1/4(遺産全体の半分の1/2) | 250万円 |
子どもが3人以上いる場合は、配偶者が1/2、残りの1/2を子どもの人数で等分します。
腹違いの兄弟(異母兄弟)の遺産を相続する場合
例えば、あなたの妹(弟)が亡くなり、妹に配偶者・子供がおらず、親・祖父母等の直系尊属も亡くなっている場合は、以下のようになります。

民法第900条第4号ただし書きによれば、兄弟姉妹間の相続では、異母兄弟の相続分は父母両方が同じ兄弟姉妹の半分になります。
兄弟が複数人いる場合、計算が複雑になりますので、簡単な計算方法をお伝えします。
遺産をお団子に見立てて考えてみましょう。
まず、異母兄弟はお団子をそれぞれ1つずつもらえます。次に、母親を同じくする兄弟姉妹はその倍の、お団子2つをもらえます(上図参照)。
そして、各人の相続割合を出す場合は、全体のお団子の合計数を分母、それぞれのお団子の数を分子として計算します。
上の例では、全体のお団子の合計数が4つなので分母は4。母を同じくする兄のお団子は2つなので相続分2/4、異母兄弟ABはそれぞれ1つずつで相続分1/4ずつとなります。
| 続柄 | 相続の割合 | 遺産が3,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 自分 | 2/4 | 1500万円 |
| 異母兄妹A | 1/4 | 750万円 |
| 異母兄妹B | 1/4 | 750万円 |
配偶者と異母兄弟が相続人になる場合
また、亡くなった人に配偶者がいるものの、子どもや父母などがいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹全体の法定相続分は4分の1です。そのうえで、父母の一方だけを同じくする異母兄弟の相続分を、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1として計算します。
| 続柄 | 相続の割合 | 遺産が3,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 3/4 | 2,250万円 |
| 父母の双方が同じ兄 | 1/6 | 500万円 |
| 異母兄弟 | 1/12 | 250万円 |
異母兄弟が先に亡くなっている場合は甥・姪が代襲相続することがある
相続人になるはずだった異母兄弟が、被相続人より先に亡くなっている場合、その異母兄弟に子どもがいれば、甥・姪が代わりに相続人になることがあります。これを代襲相続といいます。
兄弟姉妹の代襲相続は、原則として甥・姪の一代に限られます。相続人調査では、異母兄弟本人だけでなく、その生死や子どもの有無も確認する必要があります。
遺留分の有無も亡くなった人との関係で異なる
父親が亡くなり、異母兄弟が「子ども」として相続人になる場合、異母兄弟には遺留分があります。
一方、異母兄弟本人が亡くなり、兄弟姉妹として相続人になる場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、遺言書によって別の人に全財産が相続・遺贈された場合、兄弟姉妹は原則として遺留分侵害額請求を行えません。
異母兄弟が相続人になるケース・ならないケース
異母兄弟が相続人になるかどうかは、誰が亡くなったのかと、亡くなった人との間に法律上の親族関係があるかによって決まります。血縁関係があるだけで、必ず相続人になるわけではありません。
主なケースを以下の表で確認しましょう。
| ケース | 相続人になるか |
|---|---|
| 父親の婚姻中に生まれた子 | 原則としてなる |
| 婚姻外で生まれ、父親から認知された子 | なる |
| 婚姻外で生まれ、父親から認知されていない子 | 原則として現時点ではならない |
| 父親の死亡後に死後認知が認められた子 | 相続人になる可能性がある |
| 自分の母親と親子関係がない異母兄弟 | 母親の相続人にはならない |
| 異母兄弟本人に子どもや孫がいる | 兄弟姉妹は相続人にならない |
| 異母兄弟本人に子ども・孫・父母・祖父母がいない | 兄弟姉妹が相続人になる |
| 特別養子縁組で実方との親族関係が終了している | 通常とは異なるため個別確認が必要 |
特に、婚姻関係にない男女の間に生まれた子が父親の遺産を相続する場合は、父親から認知されているかが重要です。また、異母兄弟本人が亡くなった場合は、子どもや父母などの先順位相続人がいると、兄弟姉妹は相続人になりません。
異母兄弟がいる場合の相続手続きの進め方
もし急に異母兄弟の存在が発覚したとしたら、何から手を付ければ良いのでしょうか。ここでは、4ステップで異母兄弟がいる場合の相続の流れを解説します。
- 司法書士や税理士の無料相談を頼ってみる
- 遺族や戸籍謄本を通じて連絡先を把握する
- 異母兄弟に相続に関する手紙を送る
- 相続放棄か遺産を分割するか話し合う
まずは司法書士や税理士の無料相談を頼ってみる
相続問題は法律や税務の専門知識が必要です。特に、異母兄弟が関わる相続は複雑になりやすいため、まずは司法の専門家に相談することをおすすめします。
専門家に相談することで、自分の状況に合わせた的確なアドバイスを受けることができます。
相談する際は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
多くの司法書士事務所や税理士事務所では、初回無料相談を実施しているので、ぜひ活用してください。
遺族や戸籍謄本を通じて連絡先を把握する
異母兄弟の存在がわかったら、次は連絡先を確認する必要があります。しかし、急に異母兄弟がいると知ったところで、電話番号も住所もわからないということも多いと思います。
まずは遺族(親戚)に連絡先を知っているかどうか聞いてみましょう。後述する戸籍謄本を辿る方法よりも早く連絡が取れます。
誰も連絡先を知らない場合は、以下の手順で異母兄弟の住所を調べられます。
- 被相続人(父親)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する(本籍地の市区町村役場で入手)
└数日〜1週間 - 戸籍から異母兄弟の存在を確認する
- 異母兄弟の本籍地を確認する
- 本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を請求する
└窓口なら即日。郵送なら1週間 - 附票から現住所を確認する
異母兄弟に相続に関する手紙を送る
連絡先がわかったら、まずは手紙で連絡するのがおすすめです。いきなり電話や訪問するよりも、相手に考える時間を与えられるからです。
手紙の例文を以下にまとめました。

相続放棄か遺産を分割するか話し合う
異母兄弟と連絡が取れたら、遺産分割協議を行います。この協議では、相続財産をどのように分けるかを話し合います。
遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要があるため、異母兄弟の協力が必要です。話し合いのポイントは以下の3つです。
異母兄弟が相続を望まない場合は、相続放棄という選択肢もあります。相続放棄は家庭裁判所に申述する必要があり、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
10ヶ月以内に決まらないと相続税が高くなるので注意
遺産分割協議に期限はありません。しかし、相続税の申告・納付は相続開始を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。
この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税がかかる可能性があるため、遺産分割協議は10ヶ月以内を目処に話をまとめるのがポイントです。
遺産分割が長引いている場合でも、相続税の申告期限は延びないので、間に合わない場合は、未分割のまま申告しましょう。その場合、後日分割が確定したら以下の手続きへ進みます。
| 更正の請求 | 相続税を多く納めた場合に、税金を払い戻す手続きを行う |
| 修正申告 | 納める相続税が少なかった場合に行う手続き |
相続する財産が複雑で高額な場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
異母兄弟の相続における注意点
異母兄弟が相続に関係する場合、以下の3つの点に注意が必要です。
婚姻関係がない相手との子どもにも相続権がある
父親や兄弟姉妹が亡くなった場合、多くのケースで異母兄弟(姉妹)にも相続権があり、相続人になります。
ここで注意したいのは、婚姻関係になかった相手との間に生まれた子でも、父親に認知されていれば、法律上の子どもとして相続権を持つ点です。
例えば父のかつての愛人の息子がいたら、その息子にも相続権が生じます。認知された子どもの相続分は、婚姻関係にある相手との間に生まれた子どもと同じです。
遺産を相続するには、遺族全員で協議を行う必要があるため、異母兄弟に連絡しなければなりません。
認知されていない子どもに相続権はない
異母(異父)兄弟が被相続人の非嫡出子(=婚姻外で生まれた子ども)である場合、法律上の「子ども」としての身分を取得するためには、認知が必要です(参考:民法第779条)。
認知されていない異母(異父)兄弟は、法律上、被相続人の子どもとしての身分がないため、相続権を一切有しません。
認知されていない子どもが相続権を得るためには、「死後認知」の手続きが必要です。死後認知は、父または母の死後に法律上の親子関係を認めてもらう手続きで、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
行方が分からないときは不在者財産管理人の選任申立てが必要
異母兄弟の存在がわかっても、戸籍の住所が削除されていたり、あっても現住所に住んでおらず、居所の手がかりがつかめない場合、相続手続きを進めるために「不在者財産管理人」の選任申立てが必要になることがあります。
不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって財産管理を行う人のことで、家庭裁判所に申し立てて選任してもらいます。選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得ることで、不在者に代わって遺産分割協議に参加できます。
申立ての手続きは複雑なため、弁護士や司法書士に依頼することをおすすめします。また、申立てには収入印紙800円と家庭裁判所の定める郵便切手分の費用が必要です。
不在者の財産から財産管理人への報酬や管理費用を支払うことが難しいと家庭裁判所が判断した場合には、予納金を求められることがあります。通常は30万円から100万円が目安とされています。
異母兄弟との相続で起こりやすいトラブル
異母兄弟との相続では、互いに面識がなかったり、保有している情報に差があったりすることから、通常の相続よりも話し合いが難しくなる場合があります。
ここでは、異母兄弟が相続人になるケースで起こりやすいトラブルを解説します。
異母兄弟の存在や連絡先が分からない
相続手続きを始めてから、戸籍上に会ったことのない異母兄弟がいると判明するケースがあります。異母兄弟が法定相続人である場合、連絡先が分からないからといって、その人を除外して遺産分割協議を進めることはできません。
まずは被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、相続人を確定します。その後、異母兄弟の戸籍や戸籍の附票などを取得し、現在の住所を調査します。
住所を調べても所在を確認できず、従来の住所や居所を離れて戻る見込みがない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには、原則として家庭裁判所の許可が必要です。
異母兄弟が遺産分割協議に応じない
異母兄弟に手紙や電話で連絡しても、返事がない、遺産分割協議への参加を拒否されるといったトラブルもあります。しかし、法定相続人の一人が話し合いに応じない場合でも、その人を除外して遺産の分け方を決めることはできません。
まずは相続が発生した事実や相続財産の内容、遺産分割協議が必要な理由を書面で説明し、回答を求めます。連絡した記録を残すため、必要に応じて配達証明付きの郵便や内容証明郵便を利用する方法もあります。
それでも話し合いが進まない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停でも合意できない場合は審判へ移行し、裁判官が財産の内容や各相続人の事情を考慮して分割方法を判断します。
相続財産の内容を疑われる
被相続人と同居していた相続人が預貯金や不動産を管理していた場合、異母兄弟から「財産を隠しているのではないか」「預金を勝手に引き出したのではないか」と疑われることがあります。
疑いを避けるためには、預貯金、不動産、有価証券、保険、借入金などを一覧にした財産目録を作成し、残高証明書や登記事項証明書などの資料とともに開示することが重要です。被相続人の死亡前後に多額の出金がある場合は、使途を説明できる領収書や記録も保管しておきましょう。
遺産の範囲や預金の使途について相続人間で主張が食い違うと、遺産分割協議だけでは解決できず、別途訴訟などが必要になる場合があります。財産を管理していた人だけで判断せず、早い段階から情報を共有することがトラブル防止につながります。
父親の介護や生前援助をめぐって対立する
被相続人と同居して介護をしていた相続人が「自分は長年父親を支えてきたので多く相続したい」と主張する一方、異母兄弟が法定相続分どおりの分割を求め、対立することがあります。
相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をしていた場合は、「寄与分」が認められる可能性があります。ただし、家族として通常期待される範囲の介護や家事を行っただけで、必ず寄与分が認められるわけではありません。介護期間や内容、費用負担を示す資料が重要です。
反対に、住宅購入資金や事業資金など、多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合は、「特別受益」として相続分の計算に影響する可能性があります。介護や生前援助を主張する場合は、通帳、契約書、領収書、介護記録などの客観的な資料を用意して話し合いましょう。
父親の死後に認知を求められる
父親が亡くなった後に、婚姻関係にない女性との間に生まれた子から、父親との親子関係を認めるよう求められることがあります。生前に認知されていなかった子でも、父親の死亡後に認知の訴えを提起し、死後認知が認められる可能性があります。
死後認知が認められると、その人は父親の子どもとして相続人になります。すでにほかの相続人の間で遺産分割が終わっている場合でも、状況によっては、相続分に相当する金銭の支払いを求められる可能性があります。
死後認知によって相続人の人数や相続割合が変わると、遺産分割や相続税の計算を見直さなければならないことがあります。認知の訴えを起こされた場合は、戸籍や遺産分割の状況を確認し、弁護士や税理士などへ早めに相談しましょう。
異母兄弟がすでに死亡し、甥・姪が相続人になる
本来相続人になるはずだった異母兄弟が被相続人より先に亡くなっている場合、その異母兄弟に子どもがいれば、甥・姪が代わりに相続人になることがあります。これを代襲相続といいます。
甥・姪は、亡くなった異母兄弟が受け取るはずだった相続分を引き継ぎます。甥・姪が複数いる場合は、その相続分を人数に応じて分けるのが原則です。
兄弟姉妹の代襲相続は、原則として甥・姪の一代までです。ただし、相続人の人数が増えるほど、戸籍の収集や連絡、遺産分割協議が複雑になります。異母兄弟がすでに亡くなっている場合は、その子どもの有無まで戸籍で確認する必要があります。
異母兄弟との相続トラブルを防ぐ生前対策
異母兄弟がいる家庭では、相続が発生してから初めて相続人同士が連絡を取るケースがあります。面識がない状態で遺産分割を進めると、財産の内容や分け方をめぐって対立しやすいため、遺言書の作成や財産の整理などを生前に進めておくことが重要です。
遺言書を作成する
異母兄弟との相続トラブルを防ぐには、誰にどの財産を相続させるのかを遺言書で明確にしておくことが有効です。遺言書がない場合は、異母兄弟を含む相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決めなければなりません。
たとえば、現在の配偶者に自宅を相続させ、子どもには預貯金を相続させるなど、財産ごとに承継先を指定できます。異母兄弟同士に面識がない場合でも、遺言者の意思が明確であれば、相続人同士で一から分け方を話し合う負担を軽減できます。
ただし、父親の遺産を子どもとして相続する異母兄弟には、原則として遺留分があります。「異母兄弟には財産を一切相続させない」と遺言書に記載しても、遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、遺留分を考慮して内容を決める必要があります。
自筆証書遺言を作成する場合は、本文・作成日・氏名を自書し、押印するなど、法律で定められた形式を守らなければなりません。形式不備や紛失を防ぎたい場合は、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を検討しましょう。
遺言執行者を指定する
遺言書を作成する際は、遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指定しておくと、相続手続きを進めやすくなります。
遺言執行者は、遺言書の内容に従って、預貯金の解約や名義変更、不動産の相続登記に必要な手続きなどを行います。異母兄弟同士に面識がない場合や関係が良好でない場合でも、手続きを行う人をあらかじめ決めておくことで、相続人間の連絡や調整にかかる負担を軽減できます。
相続人の一人を遺言執行者に指定することもできますが、その人が財産を多く取得する場合は、ほかの相続人から公平性を疑われる可能性があります。対立が予想される場合は、司法書士や弁護士などの専門家を指定することも検討しましょう。
遺言執行者を指定する場合は、候補者へ事前に相談し、引き受けてもらえるか確認しておくことも大切です。
財産と債務を一覧にする
相続人同士の疑念を防ぐため、預貯金、不動産、有価証券、生命保険、自動車などの財産を一覧にしておきましょう。住宅ローンや借入金、未払いの税金など、マイナスの財産も含めて整理する必要があります。
異母兄弟と普段から交流がない場合、被相続人と同居していた家族だけが財産の内容を把握していることがあります。その状態で相続が発生すると、異母兄弟から「財産を隠しているのではないか」と疑われ、遺産分割協議が進まなくなる可能性があります。
財産一覧には、次のような情報を記載しておくとよいでしょう。
- 金融機関名、支店名、口座の種類
- 不動産の所在地や地番
- 株式や投資信託などの保有状況
- 生命保険会社、証券番号、受取人
- 借入先、残高、返済状況
- 重要書類や通帳の保管場所
財産一覧は定期的に見直し、財産の売却や口座の解約などがあった場合は更新してください。ただし、暗証番号やパスワードを誰でも確認できる場所に記載することは避け、適切な方法で管理しましょう。
遺留分を考慮して財産を分ける
父親が亡くなり、異母兄弟が子どもとして相続人になる場合、異母兄弟にもほかの子どもと同様に遺留分があります。遺言書によって一部の相続人に財産を集中させると、財産を取得できなかった異母兄弟から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分をめぐるトラブルを防ぐには、遺言書を作成する前に、相続人と相続財産を確認し、それぞれの遺留分を計算しておくことが重要です。不動産を特定の相続人に承継させる場合は、異母兄弟には預貯金などを残し、遺留分を確保する方法もあります。
生前贈与がある場合は、その内容や時期によって遺留分の計算に影響する可能性があります。財産の評価や遺留分の計算が複雑な場合は、遺言書を作成する前に専門家へ相談しましょう。
生命保険や現金を活用する
遺産の大部分が自宅や事業用不動産など、分割しにくい財産である場合は、生命保険や預貯金を活用して支払資金を準備する方法があります。
たとえば、自宅を現在の配偶者や同居している子どもに相続させ、異母兄弟から遺留分を請求された場合に備えて、現金を確保しておけば、自宅を売却せずに支払える可能性があります。
死亡保険金は、受取人として指定された人が固有の権利として受け取るのが原則であり、通常の預貯金などとは異なり、原則として遺産分割の対象にはなりません。そのため、相続後に必要となる納税資金や生活資金、遺留分の支払いに備える方法として活用できます。
ただし、保険金額や保険料の負担者、受取人によって税金の扱いが異なります。被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る場合には、相続税の課税対象となるのが原則です。相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額がありますが、相続人以外が受け取る場合は、この非課税制度を利用できません。
生命保険を利用する際は、受取人が現在の希望どおりになっているか定期的に確認し、税理士などへ税負担を相談しておきましょう。
生前に家族関係を整理しておく
異母兄弟との相続トラブルを防ぐには、財産の準備だけでなく、相続人となる家族の関係を整理しておくことも重要です。
父親の死亡後に初めて異母兄弟の存在を知らされると、現在の家族が戸惑うだけでなく、異母兄弟も突然の連絡に不信感を抱く可能性があります。可能であれば、異母兄弟がいることや、連絡先、家族関係について、配偶者や子どもへ生前に伝えておきましょう。
また、遺言書の付言事項に、財産の分け方を決めた理由や家族への思いを記載する方法もあります。付言事項には法的拘束力はありませんが、介護への感謝や過去の援助などを説明することで、相続人が遺言者の意図を理解しやすくなります。
ただし、特定の相続人に相続放棄を約束させても、被相続人の生前に有効な相続放棄をすることはできません。相続放棄は相続開始後、相続人本人が家庭裁判所へ申述する手続きです。
家族へ直接説明することが難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家を交えて話し合う方法もあります。遺言書、財産一覧、家族への説明を組み合わせて準備することが、相続発生後の負担や対立を抑えることにつながります。
よくある質問
ここからは、異母兄弟の相続に関するよくある質問と回答をまとめました。
| Q1. 異母兄弟の連絡先がわからない場合は? |
| A1. 異母兄弟の連絡先がわからない場合は、以下の方法で調査できます。 ①被相続人の戸籍謄本から異母兄弟の本籍地を確認する ②本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を請求する ③附票から最新の住所を確認する それでも連絡先がわからない場合や、住所が判明しても現住所に住んでおらず、居所が分からない場合は、前述の「不在者財産管理人」の選任申立てを検討する必要があります。 |
| Q2. 会ったことがない異母兄弟でも相続の手続きは必要? |
| A2. 会ったことがない場合でも、法律上の相続人であれば相続手続きは必要です。 遺産分割協議は、すべての相続人との間で合意をする必要があるため、異母兄弟であっても遺産分割協議に加わっていなければ、遺産分割協議自体が無効となってしまいます。遺産分割協議を成立させるためには、たとえ面識がなくても、法律上の相続人は全員参加させなければなりません。 |
| Q3. 異母兄弟に相続させない方法はある? |
| A3. 基本的に、法定相続人である異母兄弟の相続権をなくすことはできません。 ただし、被相続人が亡くなる前に①遺言書を作成しておく ②生前贈与を活用する ③相続放棄を依頼しておく(強制はできません) といった方法で対処することは可能です。いずれの方法も、法律の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。 |
| Q4. 異母兄弟の相続分は改正された? |
| A4. 民法の相続分に関する規定は、2013年(平成25年)の最高裁判決を受けて改正されました。 この改正により、婚外子(非嫡出子)の相続分は、嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子)と同等になりました。以前は婚外子の相続分は嫡出子の半分でしたが、現在は完全に平等となっています。 |
異母兄弟との相続は相手の立場で考えるのが重要
異母兄弟との相続問題は、感情的な対立に発展しやすい傾向があります。突然異母兄弟の存在を知った場合や、長年交流がない場合などは特に難しいかもしれません。
しかし、相手の立場に立って考えることが重要です。異母兄弟からすれば、自分にも正当な権利があり、それを主張することは当然のことです。
また、あなたからすれば、突然現れた異母兄弟に対して警戒心を抱くのも無理はありません。お互いの気持ちを尊重し、冷静に話し合うことが穏便な解決への近道です。必要に応じて弁護士などの専門家に間に入ってもらうことも検討しましょう。
2004年の創業以来、累計受託件数12万5,000件以上の実績を誇る相続の専門家チーム「nocos(NCPグループ)」では、各分野のプロフェッショナルが連携し、複雑な手続きにも柔軟に対応しています。初回相談は無料で、オンラインでのご相談も受け付けております。相続に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。






