この記事を要約すると
- 相続放棄と遺産分割協議による放棄との違い
- 相続放棄に必要な書類とその取得方法
- 相続放棄の期限について
1. 相続放棄とは?
相続放棄とは、故人(被相続人)の遺産を一切受け取らないと決める法的手続きです。相続放棄を行うと、その相続人は最初から相続人ではなかったものとみなされ、故人の財産や債務を引き継ぐことがなくなります。これにより、多額の債務を回避したり、相続に伴う手続きから解放されることができますが、その分、慎重な判断と準備が求められます。
通常、相続放棄は多額の借金を抱えていた故人の債務を引き継ぎたくない場合や、他の相続人とのトラブルに巻き込まれたくない場合などに行われることが多いです。
2. 遺産分割協議による放棄との違い
遺産分割協議による相続分の放棄は、相続人が遺産分割協議において、自らの相続分を他の相続人に譲る行為を指します。この場合、相続人としての地位は維持されるため、相続税の申告義務や債務の承継は残ります。
一方、相続放棄は法的手続きを経て、相続人としての地位自体を失うものです。
両者は全く異なる手続きとなりますので、その違いを十分に理解しておきましょう。
3. 相続放棄に必要な書類
相続放棄を行う際には、様々な書類が必要となります。以下では、続柄ごとに必要な書類を詳しく解説します。
3-1. 全員に共通する書類
どの続柄においても共通して必要な書類は次の3つです。
■相続放棄申述書 |
家庭裁判所に提出する書類で、申述人の基本情報や相続放棄の理由を記載します。 相続放棄申述書は、家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードすることも可能です。 |
■被相続人の住民票除票または戸籍附票 |
故人の最後の住所地が記載された書類です。申立てする家庭裁判所の管轄を確認をするために必要です。 住民票の除票は故人の住民登録があった市区町村役場で、戸籍附票は本籍地の役所で取得できます。 |
■申述人の戸籍謄本 |
相続人であることを証明するために必要です。申述人の本籍地の役所で取得することができます。 |
3-2. 配偶者の場合
配偶者が相続放棄を行う際には、共通の書類に加えて以下の書類が必要です。
■被相続人の死亡記載のある戸籍謄本 |
この書類により、被相続人の死亡が確認されます。 通常、配偶者は同一戸籍に記載されているため、申述人の戸籍で足ります。 |
3-3. 子または孫の場合
子または孫が相続放棄をする場合、共通書類に加えて以下の書類が必要です。
■被相続人の死亡記載のある戸籍謄本 |
配偶者の場合と同様に、申述人の戸籍に死亡記載があれば、それを提出します。 |
■被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本(※孫の場合) |
被相続人の子ども(被代襲者)が死亡していることを証明する書類です。 この書類は、代襲相続が発生し、孫が相続人となっていることを証明するために必要となります。 |
3-4. 父母または祖父母の場合
父母または祖父母が相続放棄を行う際には、共通書類に加えて以下の書類が追加で必要です。
■被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本 |
被相続人が生まれてから亡くなるまでの記録を示す書類で、相続の発生と相続権の確認のために必要です。 |
■被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(※子供や孫が亡くなっている場合) |
子や孫が亡くなっていることを証明する書類です。 この書類により、親や祖父母が相続権を持つことが確認されます。 |
■被相続人の父母の死亡記載のある戸籍謄本(※祖父母の場合) |
父母が亡くなっていることを証明する書類です。 この書類により、祖父母が相続権を持つことが確認されます。 |
3-5. 兄弟姉妹の場合
兄弟姉妹が相続放棄をする場合、共通書類に加えて以下の書類が追加で必要です。
■被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本 |
兄弟姉妹の相続権を証明するために必要です。 この書類によって、相続が発生したこと、相続権の確認のために必要です。 |
■被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(※子供や孫が亡くなっている場合) |
子や孫が亡くなっていることを証明する書類です。相続権の確認のために必要です。 |
■被相続人の父母の死亡記載のある戸籍謄本 |
父母がすでに亡くなっていることを証明します。相続権の確認のために必要です。 |
■被相続人の祖父母の死亡記載のある戸籍謄本 |
父母の生年月日から祖父母の死亡が明らかである場合、提出が省略されることがあります。 |
3-6. 甥姪の場合
甥姪が相続放棄を行う際には、兄弟姉妹の場合に加えて、さらに以下の書類が追加で必要です。
■被相続人の兄弟姉妹の死亡記載のある戸籍謄本 |
甥姪が代襲相続人であることを証明する書類です。 これにより、甥姪が相続権を持つ状況が確認されます。 |
4.【続柄別】相続放棄の必要書類一覧
配偶者 ・子 | 孫 | 父母・ 祖父母 | 兄弟 姉妹 | 甥・姪 | |
---|---|---|---|---|---|
相続放棄申述書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
被相続人の住民票除票 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
相続放棄する人の戸籍謄本 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 | ○ | ○ | - | - | - |
被相続人の出生時から死亡時までの すべての戸籍謄本 | - | - | ○ | ○ | ○ |
被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本 | - | ○ | - | - | ○ |
被相続人の子と孫が亡くなっている場合 その子と孫の出生時から死亡時までの すべての戸籍謄本 | - | - | ○ | ○ | ○ |
相続放棄する者より下の代の 直系尊属の記載のある戸籍謄本 | - | - | ○ | - | - |
被相続人の直系尊属の 死亡の記載がある戸籍謄本 | - | - | - | ○ | ○ |
5. 相続放棄の必要書類の取得方法
相続放棄に必要な書類は、各役所で取得可能です。
■相続放棄申述書 |
家庭裁判所に出向いて直接取得、またはウェブサイトからダウンロードできます。 申述の際は、書類に必要事項を記入し、署名・押印を行います。 |
■戸籍謄本 |
兄弟姉妹の戸籍以外であれば、最寄りの市区町村役場の窓口で取得可能です。兄弟姉妹の戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得可能で、郵送での取り寄せもできます。郵送での請求には、郵送請求書、本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒を同封する必要があります。 |
■住民票除票 |
最後に住民登録をしていた市区町村役場で取得できます。 |
これらの書類の取得には、通常1〜2週間の時間がかかるため、早めに手配を進めることが大切です。
特に、郵送での請求を行う場合は、余裕を持ったスケジュールで準備しましょう。
6. 相続放棄を行うことができる期間について
相続放棄は「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」に行わなければなりません。この期間を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなります。
また、相続財産の一部でも処分したり、債務を支払った場合には、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがありますので、注意しましょう。
期限伸長の手続き
家庭裁判所に対して「相続放棄期間伸長の申立て」を行うことで、相続放棄の期限を延長することができます。
この手続きは、相続放棄と同じく、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があり、申立書に延長が必要な理由を記載します。
【具体例】
・被相続人が複数の銀行口座を持っており、その残高や負債の確認を3ヶ月以内に把握できないかもしれない
・相続人が海外にいる、遺産が複数の地域にまたがっているなど、手続きが複雑で手間取りそう
期間延長が認められた場合、通常は1〜3ヶ月の追加期間が与えられますが、状況によってはさらに長い期間が認められることもあります。
7. よくある質問
Q1: 相続放棄の手続きはどこで行えばよいですか? |
A1: 相続放棄は、故人が最後に居住していた地域を管轄する家庭裁判所で行います。郵送でも手続きが可能ですが、書類に不備がないよう十分に確認してください。 |
Q2: 相続放棄をした場合、他の相続人に連絡する必要がありますか? |
A2: 法的には義務はありませんが、相続権が次順位の相続人に移ることを知らせておくと、後々のトラブルを避けることができます。 |
Q3: 相続放棄の期限を延ばすことはできますか? |
A3: 正当な理由がある場合には、家庭裁判所に申し立てを行うことで、相続放棄の期限を延ばすことが可能です。財産調査に時間がかかる場合や、手続きが複雑な場合には、期限伸長が認められることがあります。 |
Q4: 相続放棄をした後に、他の財産が見つかった場合どうなりますか? |
A4: 相続放棄をした後に新たな財産が見つかった場合でも、すでに放棄が受理されているため、その財産を受け取ることはできません。 |
Q5: 相続放棄を取り消すことはできますか? |
A5: 一度行った相続放棄は原則として取り消すことはできません。そのため、相続放棄を行う際は慎重に判断し、必要であれば専門家に相談することを強くおすすめします。 |
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