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不動産の贈与生前贈与

不動産の生前贈与の全解説|税金・費用・手続きと相続との違いとは?

生前贈与は、不動産や預貯金などの資産を、所有者が元気なうちに特定の人に引き継がせる手続きです。逝去後の相続手続きでは、相続人の間でもめてしまうかもしれない場合などに有効ですが、手続きや税金など、注意すべき点もあります。この記事では、生前贈与について詳しく説明していきます。

この記事を要約すると

  • 不動産を生前贈与するメリット
  • 生前贈与と相続の違い
  • 生前贈与に関わる制度や特例

1. 不動産の生前贈与とは

不動産の生前贈与とは、親や祖父母等が生きている間に、所有している土地や建物を無償で子や孫等に贈与することです。相続は財産を亡くなった後に引き継ぐものですが、生前贈与は存命中に行います。
自分の意志で、誰にどの財産を渡すかを決めることができるため、相続トラブルを避けたい方や、特定の相手に確実に財産を引き継ぎたい方にとって有効な手段となります。

2. 不動産を生前贈与するメリット

生前贈与には、主に以下のようなメリットがあります。

確実に希望する相手に不動産を引き継げる
相続では遺言書がない場合、遺産分割協議で誰が不動産を相続するか決める必要があるため、必ずしも自分が希望する相続人に不動産が相続されるとは限りません。
一方、生前贈与であれば、自分が希望する相手に確実に不動産を引き継ぐことができます。
相続税を減らす可能性がある
不動産を生前に贈与しておくことで、相続時の財産額が減少するため、結果として相続税を軽減できる可能性があります。特に、不動産の価値が今後上昇する見込みがある場合、現在の価格で贈与しておくことで、将来的に相続税の負担を減らせるかもしれません。
贈与時に贈与税が発生する場合でも、場合によっては後々の相続税よりも負担が少なくなるケースもあります。
認知症対策として有効
高齢者が認知症を発症すると、判断能力が失われ、不動産の売却や遺言書の作成ができなくなることがあります。そのため、判断能力がしっかりしているうちに生前贈与を行うことで、このようなトラブルを回避できます。
特に、不動産の管理や売却を必要とするケースでは、早めに対応することでスムーズに手続きを進められます。
相続トラブルの回避
不動産のような大きな財産は相続時に争点になることが多く、複数の相続人が不動産を巡って争う事態になることもあります。生前贈与によって、希望する相手に事前に譲り渡しておくことで、家族間のトラブルを未然に防げる可能性があります。

3. 生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続にはいくつかの違いがあります。
まず、生前贈与は自分が生きている間に自由に行うことができ、財産を誰に渡すかも決められます。一方で、相続は自分が亡くなった後に法に則って行われるため、基本的には法律上の相続人が財産を受け取ります。

また、税制面でも違いがあります。生前贈与には贈与税がかかりますが、相続には相続税がかかります。
相続税は相続時の財産総額に基づいて課税されるため、生前贈与により財産を減らしておけば、相続税が少なくなることがあります。
とはいえ、生前贈与の際には贈与税や不動産取得税などが必要になるケースが多く、また相続税の申告の際に税金の控除の特例が適用されないこともあるので、どちらが良いかは税理士など専門家に相談して判断することが大切です。

4. 不動産を生前贈与する方法

ここでは、不動産を贈与するための具体的な手続きについて説明します。

4-1. 贈与契約書の作成

まず、不動産を譲りたい人(贈与者)と不動産を譲り受けたい人(受贈者)の間で贈与契約書を作成します。
この契約書には、贈与する不動産の詳細や、贈与の条件、贈与時期などが明記されます。法律上、口頭での約束でも贈与は成立しますが、トラブルを防ぐために書面で残すことが重要です。
贈与契約書の作成は、次項の不動産の登記申請と一緒に司法書士に依頼することも可能です。

4-2. 所有権移転登記

次に、法務局で贈与された不動産の所有権移転登記を行います。
これは、贈与によって不動産の所有者が変更されたことを法的に証明する手続きであり、登記が完了することで正式に受贈者の名義となります。
登記手続きには、固定資産税評価額に基づいて計算される登録免許税という税金がかかります。
また、手続きは専門家である司法書士に依頼することが一般的です。

4-3. 納税など

通常、贈与に伴う税金として、贈与税、不動産取得税、登録免許税が発生します。
贈与税は、財産を受取った人が1年間に110万円を超える贈与に対して課税されますが、特定の要件を満たす制度(相続時精算課税制度)を活用することで、税額を軽減できる場合もあります。
不動産取得税は、贈与された不動産の評価額に応じて課税されるもので、都道府県に納める必要があります。

5. 専門家に依頼するなら

不動産の生前贈与をスムーズに進めるためには、司法書士や税理士といった専門家のサポートを受けることをおすすめします。司法書士は、所有権移転登記や贈与契約書の作成をサポートしてくれるほか、税理士は贈与税や相続税の計算を担当してくれます。専門家に依頼することで、法的な手続きや税務の負担を軽減し、適切に贈与を進めることができます。

6. 生前贈与の各種制度など

ここでは、生前贈与に関する各種制度などを見ていきます。

6-1. 相続時精算課税制度

贈与する財産の種類に関係なく、累計で2500万円までの贈与に対して贈与税がかからず、相続時にその金額を相続財産として計上します。贈与者が60歳以上の親・祖父母、受贈者が18歳以上の子・孫であることが要件で、利用の際には税務署への申告が必要です。

6-2. 暦年贈与

1年間に110万円までの贈与には贈与税がかからない制度です。税務署への申告も不要です。

6-3. 教育資金一括贈与

子や孫の教育資金として1500万円までを一括で贈与する場合、贈与税が非課税になる制度です。
ただし、この贈与は銀行を通じて管理され、指定された用途にしか使えません。また契約期間中に贈与者が亡くなった場合には、残額が相続性の対象になる場合もあるので注意が必要になります。

6-4. 結婚・子育て資金の一括贈与

結婚や子育てにかかる資金を一括で贈与する場合、最大1000万円までが非課税となります。
適用される範囲や金額が定められており、計画的に利用することが必要です。受贈者が50歳になった際は契約が終了し、その残額に対し贈与税の対象になります。また契約期間中に贈与者が亡くなった場合には、残額が相続性の対象になるので注意が必要になります。

6-5.住宅取得等の資金の贈与

住宅取得等資金とは、マイホームの新築、取得、増改築などに充てる金銭のことであり、住宅取得等の資金の贈与とは、父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ、そのための金銭を贈与されることです。尚、住宅取得等の資金の贈与の特例を受けるためには、一定の条件を満たす必要があり、確定申告も必要になります。

7. よくある質問(Q&A)

Q1. 生前贈与にかかる税金はどのように計算されますか?
A1. 生前贈与にかかる贈与税は、年間110万円を超える贈与額に対して課税されます。
課税額は贈与金額によって異なり、受贈者との関係性によって税率も変わります。
正確な税額は税務署や専門家に相談してください。
Q2. 親族に贈与した不動産にそのまま住み続けることはできますか?
A2. 贈与後も贈与者及び受贈者との間で、約束(契約)があればそのまま住み続けることは可能です。しかし、名義が変更された後は、不動産の管理責任や税金の支払い義務が受贈者に移ることになりますので注意が必要です。
Q3. 贈与された不動産を売却することはできますか?
A3. 不動産を贈与された後、受贈者はその不動産を自由に売却することが可能です。ただし、売却する際には譲渡所得税等がかかる場合があるため、税理士に相談して進めることをお勧めします。
Q4. 贈与税の申告期限はいつですか?
A4. 贈与が行われた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行う必要があります。
申告が遅れると、贈与税の特例の控除の適用が出来なかったり、また延滞税や加算税が課せられることがありますので、期限内に申告を行うことが大切です。
Q5. 生前贈与を行う際に贈与契約書は必ず必要ですか?
A5. 法的には口頭での贈与契約も有効ですが、後のトラブルを防ぐために贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。

8. nocosにできること

nocosを運営するNCPグループは、司法書士・行政書士・税理士等の有資格者100名以上を要する、相続手続きに特化した専門集団です。2004年の創業以来、累計受託件数80,000件以上の実績を重ね、現在、日本全国での相続案件受託件数No.1※となっています。全国の最寄りの事務所やご自宅へのご訪問、オンライン面談等で資格者が直接ご相談を承りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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