この記事を要約すると
- 兄弟姉妹が相続人になる条件について
- 兄弟姉妹の相続割合について
- 兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点とその対策について
1. 兄弟姉妹が相続人になるケースとは?
民法は、相続人の順位を定めています(民法第887条〜890条)。
相続人となる親族は法定相続人と呼ばれ、順位に基づいて誰が相続できるかが決まります。兄弟姉妹は第三順位で次の条件を満たす場合に法定相続人となります。
■故人に子や孫がおらず、また直系尊属である両親や祖父母等がともに亡くなっている場合
ただし、故人に子や孫、親や祖父母がいる場合でも全員が相続放棄をした場合、その権利が兄弟姉妹に移行し、兄弟姉妹が法定相続人となります。
相続放棄とは、相続人が遺産や負債を一切受け取らないという選択であり、これにより次の順位の相続人に権利が移ることになります(民法第915条)。ただし、相続放棄が行われる場合は、マイナスの財産(負債など)が含まれるリスクが高いため、相続財産を引き継ぐべきか慎重に判断する必要があります。
2. 兄弟姉妹が相続人になる場合の相続割合
民法は法定相続分という相続人が遺産を相続できる目安の割合を定めています(民法第900条)。
兄弟姉妹が相続人となった場合、法定相続分はどのように決まるのでしょうか。
基本的には、故人の配偶者がいる場合と、兄弟姉妹のみが相続人になる場合の2つのケースが考えられます。
それぞれのケースにおける相続分の計算方法を見ていきましょう。
2-1. 配偶者がいる場合
故人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります(民法第890条)。
この場合、兄弟姉妹と配偶者が法定相続人となり、相続財産を引き継ぎます。
民法では、配偶者の法定相続分が4分の3、兄弟姉妹の相続分が4分の1と定められており、兄弟姉妹が複数いる場合、残りの4分の1を兄弟姉妹全員で均等に分割します(民法第900条3項)。
【具体例】
長男が亡くなり、彼には配偶者と3人の兄弟が相続人として残っていたとします。
遺産が3000万円だった場合、3000万円のうち、4分の3にあたる2250万円が配偶者に割り当てられ、残りの750万円を兄弟3人で均等に分割し、それぞれ250万円ずつが法定相続分となります。
2-2. 兄弟姉妹のみが相続人の場合
故人に配偶者や子ども、両親がいない場合、兄弟姉妹が唯一の相続人となります。この場合、相続財産は兄弟姉妹の人数で均等に分割されます。
【具体例】
独身で子どものいない4人兄弟の長男が亡くなり、両親が既に他界している場合、二男、三男、長女の3人が相続人となります。遺産が3000万円の場合、3人で均等に分割し、それぞれ1000万円ずつが法定相続分となります。
2-3. 異父母兄弟がいる場合の注意点
兄弟姉妹の中に異父母兄弟(故人と父母の一方が異なる兄弟姉妹)がいる場合、その異父母兄弟の相続分は、全血兄弟(両親が共通の兄弟姉妹)の半分になります(民法第900条4項)。
異父母兄弟がいる場合、相続分の計算が複雑になるため、司法書士などの専門家からの法的なアドバイスを受けながら進めていくとよいでしょう。
また、全血兄弟と半血兄弟は関係性が希薄なケースもあり、遺産を巡って対立しやすい傾向にあります。生前に遺言書を作成することで、兄弟間での争いを未然に防ぐことにつながります。
【具体例】
故人が4人の兄弟を残して亡くなり、そのうち2人が全血兄弟、残りの2人が異父母兄弟だった場合、遺産を分割する際、異父母兄弟の法定相続分は全血兄弟の法定相続分の半分となります。例えば遺産が3000万円の場合、全血兄弟がそれぞれ1000万円ずつ、異父母兄弟はそれぞれ500万円ずつが法定相続分となります。
なお、いずれの場合も故人が遺言書を遺していれば、基本的に遺言書の内容に従って相続人や受遺者に遺産分割されることになります。
また、法定相続分は遺産を相続できる目安の割合であり、相続人全員が合意すれば、この割合でなくとも遺産を分割することができます。
3. 兄弟姉妹の相続における注意点
兄弟姉妹が相続人になる場合、次の点にも注意が必要です。
3-1. 遺留分が認められない
兄弟姉妹には遺留分が認められていません(民法第1042条)。
遺留分は、残された遺族の生活を守ることを目的として、一定の法定相続人に認められた最低限の相続分です。
したがって、配偶者や子ども、両親等が対象になり、兄弟姉妹は遺留分を請求する権利がありません。
そのため、故人が「全財産を友人に渡す」という内容の遺言書を遺していた場合、兄弟姉妹は友人に対し、遺留分を請求することができません。
3-2. 戸籍の収集が煩雑になる
兄弟姉妹が相続人になる場合、相続手続きを進めるために多くの戸籍を収集する必要があります。
故人と兄弟姉妹の関係を証明するため、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、両親の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があります。また、兄弟姉妹が死亡している場合には、兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本等も必要になります。
この手続きは非常に煩雑で時間がかかることが多いため、戸籍収集に慣れていない場合は、専門家に依頼することをおすすめします。
3-3. 相続税は20%割り増し
兄弟姉妹が相続人になる場合、相続税が通常より20%加算されるという規定があります。
これは、親や子どもなどの直系親族以外が相続する際に適用される割増税率です。そのため、兄弟姉妹が高額な相続財産を受け取る場合、通常よりも大きな税負担が生じる可能性があることに注意が必要です。
3-4. 代襲相続は1代のみ
兄弟姉妹が相続人になる場合、代襲相続は1代のみです。
代襲相続とは、兄弟姉妹が先に他界している場合に、その兄弟姉妹の子(故人にとっての甥・姪)が代わりに相続する制度です(民法第887条2項)。
甥・姪が既に他界している場合、その甥・姪の子どもは代襲相続できません(民法第887条3項)。
4. 兄弟姉妹が相続人になる際のトラブルを防ぐためには?
兄弟姉妹が相続人となる場合、トラブルが生じやすい場面もあります。
特に、兄弟姉妹が複数いる場合や、相続財産が不動産を含む場合は、遺産分割協議が長引くことが少なくありません。
こうしたトラブルを未然に防ぐためにどんな対策をすればよいでしょうか。
4-1. 遺言書を作成しておく
配偶者と兄弟が相続人になるケースでは、兄弟姉妹と疎遠であったり、関係性が希薄な場合など、トラブルになることも多くあります。
この場合、遺言書を事前に作成しておくことで、相続に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、財産が自宅不動産のみであった場合には、配偶者に安心した余生を送ってもらうためにも、故人が生前に遺言書を作成しておくことは有効です。
兄弟姉妹は遺留分を請求することができないので、遺留分を気にすることなく、自分が財産を渡したい人に財産を引き継ぐことができることもメリットです。
4-2. 専門家への相談
相続手続きが複雑である場合、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。特に、兄弟姉妹間で感情的な対立がある場合、第三者の専門家による調整が有効です。
専門家のサポートを受けることで、トラブルを回避し、スムーズに相続手続きを進めることができます。また、法律や税金に関する問題にも適切に対応できるため、相続が円滑に行われます。
5. よくある質問
Q1: 兄弟姉妹が相続人になる場合、全員が協力しなければならないのですか? |
A1: はい、遺産分割協議では相続人全員の合意が必要です。1人でも反対する場合、協議が進まず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要がでてきます。兄弟姉妹が相続人になる場合、感情的な対立があったり、財産が不動産で分割方法が難しいなどで、トラブルが生じることもあります。 |
Q2: 相続人の兄弟が既に亡くなっている場合、亡くなっている兄弟の子供は相続人になりますか? |
A2: はい、兄弟姉妹が相続人であり、その兄弟がすでに亡くなっている場合、その子供(故人にとっての甥・姪)が代襲相続人となります。ただし、代襲相続は一代限りであり、甥・姪が既に亡くなっている場合、甥・姪の子どもは相続人にはなりません。 |
Q3: 夫の遺産分割協議を進めていたところ、相続人である夫の兄も亡くなりました。兄には、妻と子供がいますが、亡夫の相続はどうなりますか? |
A3: 相続人が遺産分割協議中に亡くなった場合、「数次相続」となります。数次相続では、亡くなった相続人の相続分は、相続人の相続人が引き継ぐことになるため、今回の場合、亡夫の兄の子供だけではなく、兄の妻も相続権を引き継ぐことになります。 |
Q4: 故人が「全財産を妻に相続させる」と遺言書に書いていた場合、相続人だったとしても兄弟姉妹は遺産をもらうことはできませんか? |
A4: はい、遺言書に不備がない限り、兄弟姉妹は遺産をもらうことができません。 兄弟姉妹には遺留分が認められておらず、故人の妻に対して遺留分を請求することもできないため、この場合、故人妻がすべての資産を相続します。 |
Q5: 兄弟姉妹が相続人になる場合、相続税はどのように計算されますか? |
A5: 兄弟姉妹が相続人になる場合、相続税は通常より20%増額されます。相続税法では、親や子どもといった直系親族が相続する場合に比べて、兄弟姉妹などのその他の相続人が相続する場合、税負担が重くなる仕組みです。高額な財産を相続する場合は、税負担が大きくなるため、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。 |
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