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口座が凍結したかわかる方法を解説!凍結のタイミングや凍結後の対応も紹介

口座が凍結したかわかる方法を解説!凍結のタイミングや凍結後の対応も紹介

「亡くなった家族の口座が使えなくなった」。そんな突然の事態に戸惑う方は少なくありません。そこで知っておきたいのが、口座凍結のタイミングと正しい確認方法です。口座が凍結されると、預金の引き出しや公共料金の引き落としができず、日常生活や相続手続きに支障をきたすおそれがあります。誤った対応によるトラブルや相続放棄できないリスクを避けるには、事前の知識と準備が欠かせません。
本記事では、口座凍結の発生タイミング、凍結の確認方法、凍結後にすべき対応、生前にできる備えまでを具体的に解説します。

この記事を要約すると

  • 銀行口座は名義人の死亡を銀行が知った時点で凍結され、家族からの連絡や訃報などで把握されます。
  • 口座凍結の確認はATMや窓口で可能です。解除には相続人全員の書類や手続きが必要です。
  • 生前に口座一覧の作成や現金の備えをしておくと、凍結後の混乱や家族の負担を減らせます。

1. 口座凍結のタイミングはいつ?

銀行口座が凍結されるタイミングは、「口座名義人の死亡を銀行が把握したとき」です。死亡届を役所に提出しても、役所から銀行へ連絡がいくことはなく、銀行ごとに凍結のタイミングが異なります。

多くの場合、家族や相続人が銀行に死亡の事実を知らせたとき、または残高証明書の発行を依頼したときに口座が凍結されます。また、新聞のお悔やみ欄や葬儀の案内などを通じて銀行職員が把握するケースもあります。

凍結されると、その口座からの入出金がすべて停止されるため、死亡後は早めに状況を確認することが大切です。

2. 口座が凍結されているか確認する4つの方法

被相続人の口座が凍結されていることは、金融機関から通知が来るわけではありません。以下の4つの方法を使って、自分で確認する必要があります。

  1. ATMで残高照会をする
  2. 口座に入金や振込みを試す
  3. 通帳の記帳をしてみる
  4. 銀行窓口で直接確認する(電話では不可の場合が多い)

2-1. ATMで残高照会をする

最も手軽に口座凍結の有無を確認できる方法が、ATMでの残高照会です。

被相続人のキャッシュカードを使ってATMで残高照会を試みた際、「お取扱いできません」や「窓口にお問い合わせください」などのメッセージが表示される場合は、口座が凍結されている可能性があります。

2-2. 口座に入金や振込みを試す

凍結された口座は、外部からの入金や振込みも受け付けなくなります。そのため、被相続人の口座に少額の振込みを試みることで、凍結の有無を確認することができます。

振込みがエラーで返ってくる、あるいは処理ができなかった場合は、口座が凍結されている可能性が高いといえるでしょう。ただし、金融機関によってはほかの理由で入金できないケースもあるため、最終的な判断は、ほかの方法とあわせて確認することをおすすめします。

2-3. 通帳の記帳をしてみる

通帳の記帳によっても、口座が凍結されているかどうかを確認することが可能です。通常であれば最新の取引が印字されますが、凍結されている口座では「記帳できません」や「窓口へお問い合わせください」といったエラーが表示されることがあります。

ただし、金融機関やATMの機種によっては具体的なエラーメッセージが表示されない場合や凍結後も記帳可能な金融機関もあるため、通帳記帳はほかの確認方法とあわせて使うのが望ましいでしょう。

2-4. 銀行窓口で直接確認する(電話では不可の場合が多い)

口座の凍結状況を確実に確認したい場合は、銀行の窓口で直接問い合わせるのが最も確実な方法です。相続人であることを示す書類を提示することで、対応してもらえるケースが一般的です。

一方で、電話での問い合わせには応じない金融機関も多く、口座情報や凍結の有無は電話では教えてもらえないことがほとんどです。訪問前には、必要書類や手続き内容をあらかじめ確認しておくと安心です。

ただし、金融機関に確認することで、金融機関側が口座名義人の死亡を知るきっかけとなり、口座が凍結されていなかった場合でも口座が凍結される可能性が高いため、凍結を望まない場合は、注意しましょう。

3. 口座凍結後にすべき2つの対応

口座が凍結されると、預金の引き出しや支払いができなくなります。生活や葬儀に支障をきたさないためにも、以下の2つの対応を早めに行うことが重要です。

  • 公共料金やクレジットの引き落とし口座を変更する
  • 凍結解除手続きを進める(解約または名義変更)

なお、緊急でお金が必要な場合、仮払い制度を活用して葬儀費用や生活費を引き出すことも可能です。口座凍結後にすべき2つの対応と一緒に説明しているので、あわせてチェックしましょう。

3-1. 公共料金やクレジットの引き落とし口座を変更する

口座が凍結されると、公共料金やクレジットカードなどの自動引き落としも停止されてしまいます。その結果、支払いが滞り、電気やガス、水道などのライフラインが止められるリスクが生じるほか、延滞金や督促状が届くおそれもあります。

こうした事態を防ぐためには、できるだけ早く別の口座へ引き落とし先の変更手続きを行う必要があります。特に故人と同居していた家族が生活費を共有していた場合は、生活への影響が大きいため、優先的に対応しましょう。

3-2. 凍結解除手続きを進める(解約または名義変更)

口座が凍結された場合、相続人が手続きを行わなければ口座はそのままの状態が続きます。解除には、通常「解約して払戻しを受ける」か「名義を相続人に変更する」いずれかの方法があります。

手続きには、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、遺産分割協議書、故人の出生から死亡までの戸籍など、複数の書類が必要です。また、金融機関ごとに必要書類が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

名義変更を選ぶ場合でも、金融機関によっては対応していないケースがあり、その場合は解約払戻し手続きとなります。煩雑な手続きに不安がある方は、専門家に相談するのもひとつの方法です。

3-3. 仮払い制度を活用して葬儀費用や生活費を引き出す

口座が凍結されると、葬儀費用や当面の生活費を準備できずに困ることがあります。こうした緊急時の対応手段として活用できるのが、「仮払い制度(遺産分割前の預貯金払戻し制度)」です。

この制度を使えば、相続人1人でも手続きが可能で、相続開始時の預金残高の3分の1に法定相続分をかけた金額(上限150万円)まで引き出すことができます。

利用にあたっては、戸籍謄本や相続関係を証明する書類などが必要となり、金融機関で所定の手続きを行う必要があります。なお、引き出した金額は相続財産の一部とみなされるため、遺産分割時には精算が必要です。

4. 口座凍結の確認・解除時に気を付けたい注意点

口座凍結の確認や解除には、相続特有の注意点がいくつかあります。トラブルや法的リスクを避けるためにも、ポイントを押さえて慎重に対応しましょう。

4-1. 引き出すと単純承認扱いになり、相続放棄できなくなる

被相続人の預金を、口座が凍結される前に引き出して使用してしまうと、「単純承認」とみなされる可能性があります。単純承認とは、遺産をすべて引き継ぐ意思を示したと法律上取り扱われる行為です。

この状態になると、たとえ多額の借金が後から判明しても、相続放棄ができなくなります。引き出しの使途によっては、単純承認とみなされない場合もありますが、無用な疑いの余地を生じさせないためにも、相続の意思を固めるまでは、預金の引き出しをしないのが賢明です。

相続放棄を検討している場合は、預金に一切手をつけず、すぐに財産調査をして、必要であれば家庭裁判所に申述を行いましょう。

4-2. 他の相続人とトラブルになる可能性がある

被相続人の口座から勝手にお金を引き出した場合、ほかの相続人との間でトラブルが発生するリスクがあります。預金は遺産分割の対象となるため、すべての相続人の同意なしに使ってしまうと、「使い込み」や「不正取得」と疑われる原因になります

たとえ生活費や葬儀費用のためだったとしても、事後報告では信用問題に発展することも少なくありません。後々の遺産分割協議に支障をきたすおそれがあるため、口座の扱いについては慎重な姿勢を貫きましょう。

必要な費用がある場合は、必ず相続人間で事前に話し合い、合意を得てから対応することが大切です。

4-3. ネット銀行の場合は存在の把握にも注意

近年はネット銀行に口座を持つ人も増えており、相続人がその存在に気づかないケースも少なくありません。ネット銀行は通帳が発行されないことが多く、口座情報が紙で残っていないため、本人のパソコンやスマートフォン、メール履歴、郵送物などから確認する必要があります。

もしネット銀行の口座が放置されると、相続財産の漏れとなり、遺産分割協議のやり直しや不要なトラブルの原因になりかねません。相続発生後は、デジタル遺産も含めた財産調査を徹底し、ネット銀行口座の有無を早期に把握しておくことが重要です。

5. 口座凍結に備えて生前からできる5つの対策

口座凍結後の混乱を防ぐためには、生前からしっかりと準備をしておくことが大切です。ここでは、家族に負担をかけないためにできる以下の5つの対策を紹介します。

  • 取引金融機関の一覧を作成・共有しておく
  • 不要な口座を解約し、口座数を整理する
  • 通帳の保管場所を家族で共有する
  • 一定額の現金を確保しておく
  • 任意後見制度や家族信託など専門家と連携しておく

5-1. 取引金融機関の一覧を作成・共有しておく

生前に取引している金融機関の一覧を作成しておくと、相続発生後の手続きを大幅にスムーズに進めることができます。口座の有無がわからないと、相続人が一から調査する手間がかかり、手続きの遅れやトラブルの原因になりかねません。

一覧には、金融機関名、支店名、口座番号、口座の種類、キャッシュカードやインターネットバンキングの有無なども記載し、家族と共有しておくと安心です。

5-2. 不要な口座を解約し、口座数を整理する

取引のない口座や残高が少ない口座を整理しておくことも重要な対策です。相続が発生すると、たとえ数百円しか入っていない口座でも解約や名義変更の手続きが必要になり、大きな手間となります。
また、複数の金融機関に口座が分散していると、相続手続きにかかる時間も長引きがちです。生前のうちに必要な口座だけを残し、不要なものは解約しておくと、家族の負担を軽減できます。

5-3. 通帳の保管場所を家族で共有する

万が一のときに備え、通帳やキャッシュカードの保管場所を家族と共有しておくことも大切です。これらが見つからないと、口座の存在確認や手続きが大幅に遅れ、相続人に大きな負担をかけてしまいます。

場所を伝えるだけでなく、鍵付きの場所に保管するなど安全管理にも配慮しましょう。情報の更新も忘れず、定期的に見直すことが安心につながります。

5-4. 一定額の現金を確保しておく

口座が凍結されると、預金をすぐに引き出すことができず、生活費や葬儀費用の支払いに困ることがあります。こうした事態に備えて、あらかじめ一定額の現金を手元に用意しておくと安心です。

ただし、現金を多額に持つことは盗難や紛失のリスクもともなうため、保管場所や管理方法には十分な注意が必要です。現金の使用目的や保管場所についても、信頼できる家族に共有しておくとスムーズに対応できます。

5-5. 任意後見制度や家族信託など専門家と連携しておく

認知症や死亡による口座凍結に備える手段として、任意後見制度や家族信託を利用する方法があります。任意後見契約を結んでおけば、判断能力が低下した場合でも後見人が財産管理を代行できます。

また、家族信託を活用すれば、生前に財産管理や承継のルールを柔軟に決めておくことが可能です。これらの制度を活用する際は、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、最適な方法を検討しましょう。

6. よくある質問

ここでは、検索でも多く見られる代表的な質問をQ&A形式でまとめました。口座管理を進める際の参考にしてください。

Q1. 口座凍結されているか確かめるには?
A1. 口座凍結の確認は、ATMでの残高照会や通帳の記帳、銀行窓口での直接確認が一般的な確かめ方です。
 ATMで「お取扱いできません」などの表示が出た場合は凍結の可能性があります。ただし、勝手な引き出しは相続放棄ができなくなるなど、トラブルにつながるおそれもあるため、確認は慎重に行いましょう。
Q2. 銀行の口座凍結はいきなりされるの?
A2. 基本的に銀行口座がいきなり凍結されることはありません。多くの場合は、家族が銀行に名義人の死亡を連絡したときや、銀行が葬儀や訃報を通じて事実を確認したときに凍結されます。
Q3. 口座凍結中もお金は振り込まれる?
A3. 凍結された口座は、預貯金の引き出しや入金など、お金の出入りに関わることがすべてできなくなります。株式の配当金などの振込みもされなくなります。

7. 今から備えて、相続後に困らない口座管理をはじめよう

口座の凍結は、名義人が亡くなった直後に起こりうる重要な手続きです。公共料金の支払いや葬儀費用の捻出ができず、生活面・金銭面の混乱につながるおそれもあります。「どの口座が使えなくなるのか」「どう確認すればいいのか」と不安を感じている方は、早めに備えておくことが何より大切です。

本記事では、口座凍結のタイミングや確認方法、凍結後の対応、生前の対策を解説してきました。相続手続きは限られた時間のなかで進めなければならない場面も多く、混乱やトラブルを避けるためには、正確な知識と早めの行動が重要です。

相続手続きの専門家集団である「nocos(NCPグループ)」は、司法書士・税理士などの有資格者が直接対応し、最適な解決策をご提案します。全国対応・オンライン相談にも対応しているので、まずはお気軽にお問い合わせください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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