この記事を要約すると
- 被相続人とは、財産や債務を残して亡くなった方のことをいいます。法律上は「相続される側」にあたり、被相続人の死亡によって相続が自動的に開始します。相続人がその財産や債務を承継します。
- 被相続人が亡くなると、その名義の不動産は「相続財産」となり、被相続人名義のままでは売却を完了できません。まず相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が相続するかを決めたうえで、相続登記を完了させる必要があります。
- 被相続人の実印や印鑑登録証明書は、死亡と同時に効力を失います。相続登記や銀行の解約などの手続きでは、相続人自身の実印と印鑑証明書が必要です。
1. 被相続人とは?相続の出発点を理解しよう
1-1. 被相続人の意味
相続でいう「被相続人(ひそうぞくにん)」とは、財産(負債を含む)を残して亡くなられた方(故人)を指します。
日常的には「亡くなった人」「故人」と表現しますが、法律の手続きにおいては「被相続人」という用語が使われます。たとえば、「被相続人〇〇」「被相続人の預貯金」といった形で、財産を残した人を示します。
つまり、被相続人とは「相続の起点となる人」です。
相続は、被相続人が所有していた財産や債務を、法律の定めに従って相続人が引き継ぐ手続きです。
そのため、相続手続きの最初の段階では、被相続人の戸籍を確認し、相続関係(誰が相続人となるのか)を正確に把握することが重要になります。
1-2. 相続の開始時期
相続は、被相続人が亡くなった瞬間に開始します(民法第882条)。死亡届の提出や葬儀などの手続きとは関係なく、「死亡」という事実が発生した時点で、法律上の相続関係が生じます。
たとえば、被相続人が所有していた不動産や預貯金は、その瞬間から「相続財産」となります。ただし、それらを実際に処分したり名義を変更したりするには、戸籍の確認や遺言書の有無の調査など、正式な手続きを踏む必要があります。
また、相続人は、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に「相続を承認するか放棄するか」を判断しなければなりません(民法第915条)。期限を過ぎると、原則としてすべての財産と債務を引き継いだものとみなされます。
特に借入金や連帯保証債務などがある場合には注意が必要です。葬儀や届出などで慌ただしい時期ではありますが、この期間内に正確な判断を行うことが、後のトラブルを防ぐ第一歩となります。
判断に迷う場合や、相続人が複数いる場合には、早めに司法書士など専門家に相談しておくと安心です。
2. 法定相続人の順位と割合を理解しよう
2-1. 法定相続人とは
被相続人が亡くなったとき、「誰が財産を受け取るのか」「どんな順番で相続できるのか」は、すべて法律で決められています。
このように、法律によって相続する権利を持つ人を「法定相続人」といいます。
遺言書がない場合は、この法定相続人の範囲と順位に従って遺産を分けることになります。法定相続人には「配偶者」と「血縁関係のある親族(子・親・兄弟姉妹など)」が含まれます。
配偶者は常に相続人となり、血縁関係のある親族のうちでは、順位が高い人がいればその下の順位の人には相続権がありません。
2-2. 法定相続人の順位
法定相続人には次のような優先順位があります。
第1順位:子(直系卑属)
最も優先されるのは子です。養子や認知された子も含まれます。
子がすでに亡くなっている場合、その子(被相続人の孫等)が代襲相続人として代わりに相続します。
第2順位:父母・祖父母(直系尊属)
子がいない場合は、親が相続人となります。
両親がすでに亡くなっている場合は、祖父母等が相続人となります。
第3順位:兄弟姉妹
子(直系卑属)も親(直系尊属)もいない場合に兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(甥や姪)までが代襲相続します。
2-3. 配偶者がいる場合の組み合わせと割合
配偶者は常に相続人ですが、同時に他の血族相続人がいる場合は、以下のように相続分が定められています。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の相続分 | 他の相続人の相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 2分の1 | 残り2分の1を子で等分 |
| 配偶者+親 | 3分の2 | 残り3分の1を親で等分 |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 4分の3 | 残り4分の1を兄弟姉妹で等分 |
たとえば、配偶者と子が2人いる場合は、配偶者が全体の2分の1を相続し、残り2分の1を子ども2人で均等に分けて4分の1ずつ相続します。
2-4. 配偶者がいない場合
配偶者がいない場合は、順位の高い血族相続人のみで分けます。
たとえば子が2人いればそれぞれ2分の1ずつ、親が2人なら2分の1ずつ、兄弟姉妹が2人なら2分の1ずつ相続します。
2-5. 代襲相続に注意
相続人がすでに亡くなっている場合には、その子ども(孫や甥姪)が代わりに相続する「代襲相続」が発生します。
たとえば、被相続人の長男が先に亡くなっており、その子(孫)が2人いる場合には、孫2人が長男の相続分を等分して相続します。
代襲相続は、子の代だけでなく、場合によっては孫・ひ孫へと続くこともあります。しかし、兄弟姉妹が相続開始以前に亡くなっている場合、その子(甥姪)は代襲相続人となりますが、代襲は一代限りであり、再代襲は認められません。
なお、相続放棄の場合は代襲相続が発生せず、死亡・相続欠格・相続廃除のときにのみ代襲相続となります。
実際に誰が相続人となるかを確定するには、被相続人の戸籍を確認し、必要に応じて親族の戸籍もたどることが必要です。
3. 相続手続きの流れ
相続手続きは、「何から始めればいいのか分からない」という方が多いものです。被相続人が亡くなられたあと、相続人の確定から財産の名義変更まで、進めるべき手続きは多岐にわたります。
ここでは、代表的な手続きを時系列に沿って整理してみましょう。

3-1. 被相続人の死亡と相続の開始
相続は、被相続人の死亡によって自動的に開始します。
この時点で、相続人は「遺産を相続するか、放棄するか」を検討する立場になります。まずは葬儀や死亡届などを済ませたうえで、相続に関する書類や資料を整理していきましょう。
3-2. 遺言書の確認
相続が始まったら、最初に遺言書の有無を確認します。
遺言が見つかった場合は、その内容が財産の分け方や名義変更の進め方に大きく影響するため、早期に確認することが大切です。
自筆証書遺言が見つかったときは、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要があります。一方、公正証書遺言であれば検認は不要で、すぐに手続きに利用できます。
3-3. 戸籍の収集と相続人の確定
次に、「誰が相続人になるのか」を明らかにする作業を行います。
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)を収集します。
2024年3月1日からは「戸籍の広域交付制度」により、本籍地以外の役所でも戸籍の取得が可能になりました。これにより、遠方の役所に個別に請求したり、郵送で何度も手続きする手間が大幅に減っています。
そして、収集した戸籍をもとに、
・誰が相続人に該当するか(推定相続人の有無、認知・養子縁組、婚姻・離婚の経緯 など)
・代襲相続が発生するか(死亡・廃除の有無)
を丁寧に確認します。
あわせて、「法定相続情報一覧図」を作成しておくと、銀行や法務局での手続きをスムーズに進められます。また、必要に応じて、戸籍の附票や住民票の除票など補助資料も揃えておくとよいでしょう。
3-4. 財産と債務の調査
続いて、被相続人の財産と債務を調査します。
預貯金・不動産・株式などの「プラスの財産」だけでなく、借入金・未払い金などの「マイナスの財産」もすべて相続の対象です。
財産調査では、通帳・証券口座・登記簿謄本・保険契約書などを確認し、遺産の全体像を把握します。また、負債や保証債務の有無も慎重に調べましょう。
以下の信用情報機関では、被相続人の債務状況(カードローン・消費者金融・クレジット契約など)を照会することができます。
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)(リンク)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)(リンク)
・株式会社日本信用情報機構(JICC)(リンク)
3-5. 相続放棄・限定承認の検討
相続人は、被相続人の死亡を知った日(=自己のために相続の開始があったことを知った時)から3か月以内に、「相続するか」「放棄するか」を選択する必要があります(民法第915条)。
この期間を「熟慮期間」といい、債務が多い場合や資産の全容が不明な場合は、特に注意が必要です。
相続放棄をする場合は、家庭裁判所に申述書を提出します。放棄が認められると、最初から相続人でなかったものとみなされます。
一方で、財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ「限定承認」という方法もありますが、こちらは複数の相続人がいる場合には共同で行う必要があります。
3-6. 遺産分割協議
被相続人が遺言書を残しておらず、相続人が複数いて、法定相続分どおりに分けない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。
この協議では、実際に誰がどの財産を取得するのかを全員で話し合い、合意形成をしていきます。
遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ成立しません。一人でも反対する人がいる場合は、話し合いが成立しないことになります。
合意がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・実印で押印します。この書類は、不動産の名義変更や銀行口座の払い戻しなど、あらゆる相続手続きで必要になる重要な書面です。
もし相続人の間で意見が一致せず、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」または「審判」を申し立てることになります。
3-7. 名義変更・各種手続き
最後に、不動産・預貯金・株式などの名義変更を行います。
不動産の名義変更(相続登記)は法務局で行い、預貯金の払い戻しや保険金の請求は各金融機関・保険会社などで個別に手続きを進めます。
相続税の申告が必要な場合は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
税金や登記など、専門的な判断が求められる部分については、司法書士・税理士など専門家に相談しながら進めると安心です。
4. 名義変更前に知っておきたい注意点
相続手続きの最終段階では、不動産や預貯金などの名義を被相続人から相続人へと変更します。
このとき、「故人の名義のまま不動産を売却できるのか」「故人の実印が見つからないが大丈夫か」といった質問を受けることがあります。
そこで、名義変更を行う前に注意しておくべき主要なポイントをご案内します。
4-1. 不動産の売却は相続登記を済ませてから行うのが原則
被相続人が亡くなった時点で、その名義の不動産は「相続財産」となり、被相続人名義のままでは、売却して買主に引き渡すことはできません。
不動産を売却する場合は、まず相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がその不動産を取得するのかを確定させることが必要です。
遺産分割協議が成立し取得者が確定すれば、相続登記を行っていなくても、理論上は売買契約を締結することも可能です。
しかし、登記が被相続人名義のままでは、買主や不動産会社、金融機関からは誰が正当な所有者なのか確認することができず、安心して取引を行うことができません。そのため、実務上は相続登記を済ませてから売買を進めるのが一般的であり、安全です。
また、2024年4月からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく登記を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
相続登記は「売却のため」だけでなく、相続人の権利を明確にするための基本手続きでもあるため、早めに済ませておくことが重要です。
4-2. 被相続人名義のまま口座を利用することはできない
口座名義人が亡くなったことを金融機関が知ると、その銀行口座は凍結(入出金停止)されます。これは、誰が正当な相続人かを確認するまでの間、無断で預金が引き出されることを防ぐための措置です。
そのため、被相続人名義のまま口座を利用したり、自由に引き出したりすることはできません。相続人が預金を払い戻すには、金融機関ごとに所定の手続きを行う必要があります。
ただし、相続手続きがすべて完了する前でも、「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、一部の資金を引き出すことが可能です。
4-3. 被相続人の実印は使用できず、相続人の実印が必要
被相続人が生前に使用していた実印や印鑑登録証明書は、死亡と同時に効力を失います。相続登記や銀行の解約手続きで被相続人本人の印鑑を使うことはありません。
一方で、相続人側では手続きの際に遺産分割協議書への押印や、印鑑証明書の提出が必要になる場面があります。印鑑登録をしていない人がいる場合には、早めに市区町村役場で登録を済ませるようにしましょう。
5. よくある質問・Q&A
| Q1. 被相続人の銀行口座はいつまで使えますか? |
| A1. 被相続人の死亡が銀行に伝わると、口座は「凍結」され、入出金ができなくなります。これは、誰が相続人か確定する前に預金が引き出されてしまうことを防ぐためです。 口座の解約や払い戻しを行うには、戸籍一式で相続人を確定し、必要書類(印鑑証明書など)を添えて手続きを進める必要があります。 |
| Q2. 被相続人名義の不動産はそのまま売却できますか? |
| A2. 被相続人が亡くなると、不動産は「相続財産」となります。遺産分割協議で取得者が決まれば、相続登記を行っていなくても理論上は売買契約を締結することも可能ですが、登記が被相続人名義のままでは売却を完了することができません。そのため、実務上は相続登記を済ませてから売買契約の手続きを行います。 |
| Q3. 相続放棄をしたら財産を一切受け取れないのですか? |
| A3. はい。相続放棄が家庭裁判所で受理されると、最初から相続人でなかったものとみなされます。放棄した人はプラスの財産もマイナスの財産も一切承継しません。 ただし、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。期限があるため慎重に検討しましょう。 |
| Q4. 遺産分割協議書は必ず必要ですか? |
| A4. 遺言がない場合で、法定相続分と異なる割合で財産を分けるときには、遺産分割協議書の作成が必要です。 複数の相続人がいる場合でも法定相続分どおりに遺産を分ける場合は必須ではありませんが、預金の払い戻しなどで提出を求められることが多いため、作成しておくと安心です。 |
| Q5. 不動産以外で名義変更が必要なものは? |
| A5. 預貯金や株式、自動車、生命保険、公共料金なども名義変更や解約が必要です。 それぞれ手続き先や必要書類が異なりますが、法定相続情報一覧図を作成しておくと、多くの機関で戸籍の代わりに利用でき、効率的に手続きを進められます。 |
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