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公正証書遺言とは?安心の遺言書作成方法と費用をわかりやすく解説

公正証書遺言は、公証人が遺言者本人の意思を確認したうえで作成する遺言書です。作成には原則として証人2名の立会いが必要なほか、必要書類の準備や公証人手数料などの費用もかかります。一方、公証人が法律で定められた方式に従って作成するため、形式不備によって無効になるリスクを抑えやすく、原本の紛失や改ざんを防げる点が特徴です。また、相続開始後に家庭裁判所の検認を受ける必要もありません。ただし、公正証書遺言であっても、遺言能力や遺留分をめぐって争われる可能性はあります。作成方法や費用、注意点まで理解したうえで、自分や家族に適した遺言方法を選ぶことが大切です。

この記事を要約すると

  • 公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため形式の不備が生じにくく、原本の紛失や改ざんのリスクも抑えられます。相続開始後の検認も不要です。
  • 公正証書遺言の費用は一律ではありません。遺言によって財産を受け取る人ごとに、その人が受け取る財産の価額に応じて公証人手数料を計算し、それぞれの金額を合算します。このほか、証人の手配や書類取得などで費用がかかる場合があります。
  • 公正証書遺言でも、必ず有効になるとは限りません。作成時の遺言能力が問題となったり、遺留分を侵害する内容の場合は相続人とのトラブルにつながったりする可能性があります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、遺言者が希望する内容を公証人に伝え、公証人が本人の意思を確認したうえで作成する遺言書です。原則として証人2名が立ち会い、法律で定められた方式に沿って作成されます。

公証人が作成に関与するため、自筆証書遺言と比べて形式の不備が生じにくい点が特徴です。また、原本は公証人側で保管されるため、紛失や改ざんのリスクを抑えられます。相続開始後に家庭裁判所の検認を受ける必要もありません。

ただし、公正証書遺言であっても、遺言者の判断能力や遺留分、記載内容などをめぐって争われる可能性はあります。

公正証書遺言を作成する際は、形式だけでなく、遺留分を侵害する内容になっていないか、財産や相続させる相手が明確に記載されているかを確認するとともに、判断能力が十分なうちに作成することが重要です。

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

一般的に作成される遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。主な違いは次のとおりです。

自筆証書遺言は、費用を抑えて作成しやすい点がメリットです。一方で、法律で定められた方式を守らなければ、遺言書として認められない可能性があります。
公正証書遺言は費用や準備が必要ですが、形式不備や紛失への不安を抑えたい場合に適しています。

公正証書遺言自筆証書遺言
作成方法公証人が作成する原則として本人が自書する
証人2名必要不要
作成費用公証人手数料などがかかる自分で作成する場合は原則不要
原本の保管公証人側で保管される自分で保管するか、法務局の保管制度を利用する
検認不要法務局で保管していない場合は必要
形式不備のリスク比較的低い書き方によっては無効になる可能性がある

公正証書遺言を検討した方がよいケース

次のような場合は、公正証書遺言の作成を検討するとよいでしょう。

  • 不動産を特定の相続人に引き継がせたい
  • 再婚しており、前婚の子がいる
  • 子どもがいない夫婦
  • 相続人同士が疎遠または不仲
  • 内縁の配偶者など、相続人以外に財産を残したい
  • 高齢や病気により自筆での作成が難しい

遺言書がなければ、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決めることになります。そのため、特定の相続人に不動産を引き継がせたい場合や、相続人以外の人に財産を残したい場合などは、自分の希望を実現するために遺言書を作成しておくことが重要です。

公正証書遺言は、公証人が本人の意思を確認し、法律で定められた方式に従って作成します。そのため、自筆証書遺言と比べて形式上の不備が生じにくく、遺言の内容をより確実に残したい場合に適しています。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、形式の不備や紛失を防ぎやすく、自分の意思を確実な形で残したい場合に適した遺言書です。一方で、作成には費用や準備が必要です。メリットとデメリットを理解したうえで、自分に合った方法を選びましょう。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方式に沿って作成するため、自筆証書遺言と比べて形式の不備が生じにくく、財産や取得者についても分かりにくい表現を避けやすい点がメリットです。

実際に、自筆証書遺言では、不動産を「自宅」とだけ記載していたため対象となる不動産を特定できなかったり、「相続させる」「遺贈する」ではなく「託す」と記載したことで、遺言の解釈が問題となり、相続登記を進めることが難しいケースがあります。このような曖昧な表現を避けやすいことも、公証人が作成に関与する公正証書遺言のメリットです。

また、公正証書遺言の原本は公証人側で保管されるため、紛失や改ざんのリスクを抑えられます。相続開始後の家庭裁判所による検認も不要です。本人が全文を手書きする必要がないため、自筆が難しい方でも利用できます。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言を作成する際は、財産の価額や遺言内容に応じた公証人手数料がかかります。

また、作成時には原則として証人2名の立会いも必要ですが、証人を自分で用意できず、公証役場や専門家に手配を依頼する場合にも、証人の日当などの費用がかかります。さらに、司法書士や弁護士などの専門家に作成のサポートを依頼する場合は報酬が必要です。

また、公証役場へ行けばその場で完成するわけではありません。相続人や財産を確認し、必要書類を準備したうえで、公証人と遺言内容を調整する必要があります。

公正証書遺言と自筆証書遺言の選び方

財産や家族関係が比較的単純で、自分で正しい形式の遺言書を作成できる場合は、自筆証書遺言も選択肢になります。

一方、不動産など分けにくい財産がある場合や、家族関係が複雑な場合、相続人以外に財産を残したい場合は、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。

どちらを選ぶ場合でも、相続開始後に希望どおり実行できる内容になっているかを確認することが大切です。

公正証書遺言の作成方法と必要書類

公正証書遺言は、公証役場へ行けばその場で作成できるものではありません。事前に相続人や財産を確認し、誰に何を残すのかを整理したうえで、公証人と文案を調整して作成します。

作成前に相続人と財産を確認する

まずは戸籍などから、将来相続人になる人を確認します。あわせて、不動産、預貯金、株式・投資信託など、遺言書に記載する財産の内容やおおよその価額を確認します。

そのうえで、誰にどの財産を引き継がせるのかを決めます。このとき、個別に記載していない財産の取得者や、指定した相続人・受遺者が遺言者より先に亡くなった場合の取得者も決めておくと、相続開始後の手続きを進めやすくなります。

そのほか、遺言内容を実現する遺言執行者や、家族への思いを伝える付言事項などについても検討します。

公正証書遺言の必要書類

作成時に必要となる主な書類は、次のとおりです。

分類主な必要書類
遺言者本人印鑑登録証明書または顔写真付きの本人確認書類
相続関係遺言者と相続人の関係が分かる戸籍
相続人以外への遺贈受遺者の住民票など
不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書など
預貯金通帳の写し、残高が分かる資料など
株式・投資信託証券会社の取引残高報告書など
証人住所・氏名・生年月日が分かる資料(運転免許証の写しなど)および職業
遺言執行者相続人・受遺者以外の人を指定する場合は、住所・氏名・生年月日を確認できる住民票や運転免許証の写しなど

必要書類は財産の種類や遺言内容によって異なります。書類を集める前に、公証役場へ確認しておくとよいでしょう。

証人になれる人・なれない人

公正証書遺言の作成には、証人2名の立会いが必要です。証人は、遺言者本人の意思に基づいて手続きが行われたことを確認します。

ただし、未成年者、推定相続人、受遺者、推定相続人・受遺者の配偶者や直系血族などは証人になれません。証人には遺言内容を知られるため、依頼する相手は慎重に選ぶ必要があります。適任者が見つからない場合は、公証役場や専門家へ手配を相談できます。

公正証書遺言を作成する流れ

一般的には、次の流れで作成します。

  • 相続人と財産を確認する
  • 誰に何を残すか整理する
  • 公証役場へ連絡する
  • 必要書類と遺言内容のメモを提出する
  • 公証人が作成した文案を確認する
  • 証人2名と作成日時を調整する
  • 遺言意思と内容を確認して作成する
  • 正本・謄本などの交付を受ける

公証人との文案調整は、メールや電話などを利用して進めることができます。文案が確定したら作成日を決め、当日は証人2名の立会いのもと、公証人が遺言者本人の意思を確認し、遺言内容に間違いがないことを確認して公正証書遺言を完成させます。

現在は、遺言者と証人も原本となる電磁的記録に電子サインをする仕組みです。

2025年10月1日以降、公正証書の作成手続きはデジタル化され、原則として電子データで作成・保存されるようになりました。また、遺言者が希望し、公証人が相当と認めた場合には、公証役場へ出向かず、ウェブ会議を利用して作成できる場合もあります。

公正証書遺言の費用と作成後の取扱い

公正証書遺言の費用は、遺産総額だけで一律に決まるものではありません。財産を受け取る人の人数や、それぞれが取得する財産の価額によって変わります。作成後の保管方法や、内容を変更する場合の取扱いも確認しておきましょう。

公証人手数料の計算方法

公証人手数料は、相続または遺贈によって財産を受け取る人ごとに計算し、それぞれの手数料を合計します。2025年10月1日以降の手数料は、次のとおりです。

財産の価額手数料
50万円以下3,000円
50万円超100万円以下5,000円
100万円超200万円以下7,000円
200万円超500万円以下13,000円
500万円超1,000万円以下20,000円
1,000万円超3,000万円以下26,000円
3,000万円超5,000万円以下33,000円
5,000万円超1億円以下49,000円
1億円を超え3億円以下4万9000円+超過額5000万円までごとに1万5000円
3億円を超え10億円以下109,000円+超過額5000万円までごとに13,000円
10億円を超える場合291,000円+超過額5000万円までごとに9,000円

遺言の対象となる財産全体が1億円以下の場合は、計算した手数料に「遺言加算」として13,000円が加算されます。

費用の計算例

長男に4,000万円相当の不動産、長女に1,000万円の預貯金を相続させる場合は、次のように計算します。

内訳金額
長男が取得する4,000万円分33,000円
長女が取得する1,000万円分20,000円
遺言加算13,000円
基本手数料の合計66,000円

これに、従来の正本・謄本に相当するデータや書面の交付手数料などが加わります。電子データでそれぞれ1通ずつ交付を受ける場合は、1通2,500円のため、上記の例では合計71,000円です。

書面で交付を受ける場合は1枚につき300円となるため、ページ数によって総額が変わります。

公証人手数料以外にかかる費用

公正証書遺言の作成では、公証人手数料のほかに、戸籍謄本や登記事項証明書などの取得費用、証人を依頼する場合の謝礼、司法書士などへ手続きを依頼した場合の報酬がかかる場合があります。

また、公証人に病院や自宅、施設などへの出張を依頼した場合は、基本手数料が加算されることがあるほか、日当と交通費も必要です。日当は1日20,000円、4時間以内の場合は10,000円とされています。

作成後の保管・変更・撤回

作成された公正証書遺言の原本は公証人が保管します。遺言者が亡くなった後は、相続人などの利害関係人が公証役場で遺言の有無や保管先を検索できます。検索の申出は無料です。

作成後に内容を変えたい場合は、新しい遺言書を作成します。このとき、新しく作成する遺言書は公正証書遺言に限らず、自筆証書遺言など別の方式でも構いません。前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合は、その抵触する部分について後の遺言が優先されます。また、遺言者は遺言の全部または一部をいつでも撤回できます。

不動産を売却した場合や家族関係が変わった場合、受遺者や遺言執行者が先に亡くなった場合などは、以前の内容のままで問題がないか見直すことが大切です。

公正証書遺言でもトラブルになるケースと注意点

公正証書遺言でも遺言能力が問題になることがある

公正証書遺言を作成する場合も、遺言者には遺言内容を理解して判断できる能力が必要です。公証人も作成時に本人の真意や判断能力を確認します。

認知症と診断されているだけで、一律に遺言が無効になるわけではありません。しかし、作成当時に遺言内容を理解できる状態ではなかったとして、相続開始後に有効性を争われる可能性はあります。民法でも、遺言者は遺言をする時点で遺言能力を有している必要があるとされています。

判断能力の低下が心配される場合は、本人が十分に内容を理解できるうちに作成を検討することが大切です。

遺留分を侵害する内容には注意する

特定の相続人に多くの財産を残す内容の公正証書遺言も作成できます。ただし、配偶者や子などの遺留分を侵害している場合は、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分を侵害していることだけを理由に、遺言そのものが無効になるわけではありません。

特に財産の大半が不動産の場合は、不動産を取得した人に十分な現金がなく、遺留分に相当する金銭の支払いが負担になることもあります。誰に何を残すかだけでなく、ほかの相続人の遺留分も確認しておきましょう。

作成後に財産や家族関係が変わることがある

公正証書遺言を一度作成しても、その内容が将来にわたって適切とは限りません。
たとえば、遺言書に記載した不動産を生前に売却した、預貯金が大きく増減した、財産を受け取る予定だった人が先に亡くなったといった変化が考えられます。結婚や離婚、出生などによって家族関係が変わることもあります。

このような場合は、以前の遺言内容のままで本人の希望を実現できるか確認し、必要に応じて新しい遺言書を作成することが大切です。

遺言執行者を指定しておいた方がよいケース

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。遺言書の中であらかじめ指定しておくことができます。

すべての公正証書遺言で遺言執行者の指定が必須というわけではありませんが、相続人以外への遺贈がある場合や、相続関係・財産関係が複雑な場合には、指定しておくと手続きを進めやすくなります。

また、公正証書遺言を作成しても、相続登記や預貯金の名義変更などが自動的に完了するわけではありません。誰が相続開始後の手続きを担うのかまで考えたうえで、必要に応じて遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。

専門家へ相談した方がよいケース

公正証書遺言は公証役場へ直接相談して作成することもできますが、財産の分け方そのものに悩んでいる場合は、事前に専門家へ相談した方がよいことがあります。

たとえば、不動産が財産の大半を占める場合、再婚や養子などで相続関係が複雑な場合、一部の相続人に多くの財産を残したい場合、相続人以外への遺贈を考えている場合などです。

また、相続登記や遺言執行まで見据えて準備したい場合は司法書士、相続人同士ですでに争いが生じている場合は弁護士、相続税への詳しい検討が必要な場合は税理士など、相談内容に応じて専門家を選ぶとよいでしょう。

よくある質問(Q&A)

Q1. 公正証書遺言でも無効になることはありますか?
A1. 公正証書遺言は公証人が関与するため形式上の不備は生じにくいものの、必ず有効になるとは限りません。作成時に遺言能力がなかった場合や、法律上証人になれない人が立ち会っていた場合などは、無効が争われる可能性があります。
Q2. 認知症になってからでも作成できますか?
A2. 認知症と診断されているだけで、公正証書遺言を作成できなくなるわけではありません。作成時に、自分の財産や誰に何を残すのかを理解して判断できる能力があるかが重要です。ただし、相続開始後に遺言能力があったかどうかをめぐって争われる可能性があります。そのため、判断能力に不安がある場合は、早めに作成を検討するとよいでしょう。
Q3. 公正証書遺言の証人は家族でもよいですか?
A3. 家族や親族だからという理由だけで、証人になれないわけではありません。ただし、推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族などは証人になれません。証人を頼める人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうこともできます。
Q4. 公証役場へ行かなくても作成できますか?
A4. 病気などで公証役場へ行くことが難しい場合は、公証人に自宅や病院などへの出張を依頼できます。また、2025年10月からは、遺言者が希望し、公証人が相当と認めた場合、ウェブ会議を利用して作成することも可能です。
Q5. 公正証書遺言があれば遺産分割協議は不要ですか?
A5. 遺言書で財産の取得者が明確に指定されていれば、原則としてその内容に沿って相続手続きを進めるため、その財産について遺産分割協議をする必要はありません。ただし、遺言書に記載されていない財産や、無効となる部分、曖昧な部分等がある場合は、遺産分割協議が必要になることがあります。

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正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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