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不動産の相続相続の登記

相続登記の義務化で起きる3つの問題点とは?放置するリスクや注意点も解説

相続登記の義務化で起きる3つの問題点とは?放置するリスクや注意点も解説

2024年4月から、相続した不動産の登記が義務化されました。これまで任意だった相続登記が法律上の義務となり、違反すれば過料が科される可能性もあります。本記事では、相続登記の義務化による3つの問題点や、登記を怠ることで生じるリスク、そして相続登記の手続きをスムーズに進めるための対処法をわかりやすく解説します。相続登記の義務化について正しく理解し、将来のトラブルを防ぐために、今から備えておきましょう。

この記事を要約すると

  • 相続登記の義務化により、相続人は相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を行う義務が生じ、これを怠ると最大10万円の過料が科されます。
  • 過去に発生した相続も相続登記の義務化の対象となり、相続登記をしていない場合には相続登記をする必要があります。これらの登記手続きは複雑・煩雑になりやすく、費用や時間面での負担も大きな課題となっています。
  • トラブルや手続きミスを防ぐには、早めの準備と司法書士など専門家のサポートを活用することが効果的です。

1. そもそも「相続登記の義務化」とは?

2024年4月1日から、相続した不動産について、相続登記の申請が義務化されました。

これまでは任意だった相続登記の申請が法律によって義務化されたことで、正当な理由なく登記を行わなかった場合には、最大10万円の過料の対象になる可能性があります。

相続登記の義務化の背景には、所有者不明土地の増加が社会問題化していることがあります。所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地のことをいいます。

相続がおきても相続登記がなされず、何世代にもわたって放置されることで、所有者不明土地が全国で増え公共事業や土地活用が妨げられたり周辺環境が悪化したりするなど、深刻な影響が出ていました。

なお、相続登記の義務化は、過去の相続であっても未登記であれば対象となる点に注意が必要です。

2. 相続登記の義務化にともなう3つの課題

相続登記の義務化により、相続人が不動産の名義変更をしなければならなくなったことで、手続きに関するさまざまな課題が浮き彫りになっています。

ここでは、相続登記の義務化にともなう3つの問題点について解説します。

2-1. 過去の相続が放置されていると、登記手続きが複雑化する

相続登記が長年行われていない不動産では、複数の相続をさかのぼって整理する必要があります。

たとえば、祖父母から親、親から子というように相続が発生していたにもかかわらず相続登記が行われていない場合、原則として、それぞれの相続ごとに相続登記を行う必要があるため、相続登記の手続きに関与しなくてはならない関係者が増え、必要書類も膨大になります

また、中間の相続人がすでに亡くなっている場合には、さらにその相続関係まで確認しなければならず、相続人同士の連絡や協議が困難になるケースも少なくありません。

なお、数次相続が発生した場合には例外的に相続登記の中間省略登記が認められているものもありますが、必要書類の膨大さや手続きの複雑さから相続に詳しい司法書士への相談が必要になるでしょう。

2-2. 登記に必要な準備や手続きが煩雑で負担になりやすい

相続登記には、戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書、登記申請書など、多くの書類を用意する必要があります。これらの書類を揃えるには、複数の役所から取り寄せる必要があり、時間と労力がかかります。

また、相続や登記に関する法律の理解、申請書等書類作成のルールには専門的な知識が求められるため、初めて手続きを行う人にとっては非常にハードルが高いといえるでしょう。

このような煩雑さから、手続き自体を後回しにしてしまう人も少なくないのが現状です。

2-3. 手続きに費用がかかる

相続登記には、登録免許税(不動産の評価額の0.4%)のほか、戸籍などの取得費用や必要書類の郵送費などがかかります。

さらに、ご自分で手続きをすることが難しい場合は、司法書士への依頼が必要になり、その報酬として5〜15万円程度の費用が発生します。過去何代にも渡って相続登記をしていない場合には、相続人の人数や事案の複雑さから報酬はさらに高額になる可能性もあります。

特に不動産の価値があまり高くないケースでは、登記にかかる費用を重く感じられることもあり、結果として登記が先延ばしにされることがあります。

3. 相続登記をしないことの5つのリスク・デメリット

相続登記の義務化により、相続登記を申請しないことは許されない状況になっていますが、そもそも登記を行わないことには多くのリスクがあります。

ここでは、相続登記を怠った場合に起こり得る5つの主なリスク・デメリットについて解説します。

3-1. 10万円以下の過料が科される可能性がある

2024年4月1日以降、相続登記は義務となり、相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。

これは行政罰の一種で、正当な理由がないのに、登記を怠った場合に過料の対象となります

登記官が相続登記の申請義務の違反を把握した場合、違反した者に対し、相当の期間を定めて相続登記の申請をすべき旨を催告します。催告したにもかかわらず、正当な理由なくその期間内にその申請をしなかった場合、管轄の地方裁判所にその事件を通知するものとされています。

3-2. 新たな相続が発生すると権利関係が複雑になる

相続登記をしないまま次の相続が発生すると、権利関係がさらに複雑になり、手続きがより困難になります。

たとえば、登記がされていない不動産を相続した相続人が亡くなった場合、その子や孫など、さらに多くの相続人が関わることになり、登記のために必要な書類も増加します。

結果として、関係者全員の同意を得ることが難しくなったり費用が高額になったりすることがあります。そのために、より相続登記が難しくなるケースも出てきます。

3-3. 売却や建築・活用ができなくなる

相続登記が済んでいない不動産の名義は、亡くなった人のままです。亡くなった人の名義のままでは不動産を売却したり、新たに建物を建てたりすることができません。

また、住宅ローンの担保にすることもできず、資産としての活用が大きく制限されます。不動産を売却して現金化したいと考えている場合は、登記の遅れが大きな障害になるため注意が必要です。

3-4. 空き家管理・固定資産税が重くなる恐れがある

相続登記を行わず、所有者不明土地は、適切な管理が行われないまま空き家になるケースがあります。

管理不全の状態が続くと、行政から「特定空き家」に指定され、固定資産税の軽減措置が外されて税額が最大6倍になるリスクもあります。

また、老朽化による倒壊などで近隣に損害を与えた場合、相続人が責任を問われる可能性もあります。

3-5. 第三者に所有権を主張できなくなることもある

相続登記がされていない不動産においては、法定相続分を超える部分の権利については、登記を備えていなければ第三者に自分が所有者であると主張することはできません。

そのため、相続人がその不動産を相続したとしても、第三者に対しては権利を主張できないことがあります。

たとえば、遺産分割完了後に相続登記を行わず、相続人のひとりが勝手に持分を売却してしまった場合でも、買主に権利の主張をすることができず、トラブルに発展する可能性があります。こうした事態を防ぐためにも、登記は早めに済ませておくことが重要です。

4. 相続登記の申請義務違反にならないための4つの対処法

相続登記は、放置すればするほど手続きが煩雑になり、費用や労力の負担も大きくなります。

そこで、相続登記をスムーズに進めるために検討できる4つの対処法をご紹介します。

4-1. 司法書士に依頼する

相続登記に関する知識や経験がない場合は、司法書士への依頼がもっとも確実な方法です。

司法書士は、登記業務に関する専門家で、戸籍や必要書類の収集から遺産分割協議書や登記申請書の作成、そして登記申請まで一括して対応してくれます。

費用の目安は5〜15万円程度(一人の相続の場合)ですが、自力で何度も手続きをやり直す手間や時間を考えると、専門家に任せた方がスムーズかつ確実です。

4-2. 相続人申告登記で罰則を回避する

相続登記の義務化と同時に創設された「相続人申告登記」は、登記の準備が整っていない場合に、過料を回避するための有効な手段です。

この制度では、不動産の所在地を管轄する法務局に対して、相続が発生したことと自分が相続人であることを申し出るだけで、義務を履行したものとみなされます。必要書類も比較的少なく、相続人単独で申請が可能です。

なお、申告後に遺産分割協議が整えば、相続登記を改めて行わなくてはなりません。相続人申告登記で、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできません。

以下の記事では、相続人申告登記について説明しています。ぜひ、あわせてチェックしてみてください。

4-3. 相続放棄を検討する

相続した不動産が老朽化していたり、売却が難しい地方の土地であったりする場合は、相続放棄もひとつの選択肢です。家庭裁判所に申立てを行い、正式に相続放棄が認められれば、登記の義務や固定資産税などの負担からも解放されます。

ただし、相続放棄をすると預貯金や他の財産も一切受け取れなくなるため、慎重な判断が必要です。不動産以外にも相続すべき資産がある場合は、次に紹介する相続土地国庫帰属制度も検討してみましょう。

4-4. 相続土地国庫帰属制度を利用する

相続した不動産だけを手放したい場合には、「相続土地国庫帰属制度」の利用が有用です。この制度では、不要な土地を国に引き取ってもらうことができます

相続放棄とは異なり、土地のみを対象にできるのが特徴です。ただし、制度の利用には一定の条件があり、急傾斜地や他人の権利が付着している土地などは対象外となります。

また、審査手数料(1万4,000円)や負担金(宅地1筆あたり原則20万円)がかかります。

以下の記事では、相続土地国庫帰属制度の基本的なルールや制度を利用することのメリットについて詳しく解説しています。ぜひ、あわせてチェックしてみてください。

5. よくある質問・Q&A

相続登記の義務化に関する制度はまだ新しく、細かい点で不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、よくある質問を取り上げ、基本的な考え方や注意点についてわかりやすく解説します。

Q1. 相続登記の義務化の問題点は?
A1. 相続登記の義務化により、以下のような負担が主な問題となっています。
・過去の相続が放置されていると複雑化する
・書類準備や申請手続きが煩雑
・経済的な負担もかかる
制度自体は意義のあるものですが、現実にはこうした実務的な負担が立ちはだかっています。
Q2. 相続登記をしないと固定資産税はどうなる?
A2. 相続登記が済んでいない場合でも、固定資産税の支払い義務は相続人全員に発生します。
市区町村は、登記の有無にかかわらず、現実に不動産を所有・使用している人に対して課税通知を送付します。そのため、登記が未了であっても、相続人全員が連帯して納税義務を負うことになります。通常は、相続人のなかから代表者を選んで納税手続きを行うことになりますが、相続人間で協議ができていない場合は、納税の負担や責任が不明確になり、トラブルの原因となることもあるので注意が必要です。
Q3. 相続登記をしないとどうなる?
A3. 登記を行わないまま放置すると、法的なペナルティとして10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
また、売却や建物の建築ができないだけでなく、複数の相続人間で権利関係が複雑化し、次の相続が発生した際に登記がさらに困難になります。固定資産税の増額リスクや、第三者への権利主張ができないという法的な不利益も生じるため、義務化された今、相続登記を早めに進めることが重要です。

6. 相続登記は早めの準備と対策がカギ

相続登記の義務化により、これまで任意だった不動産の名義変更手続きが、2024年4月から法律上の義務となりました。

登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があり、対応を先延ばしにすることで、相続人が増えて手続きが煩雑になる、空き家の管理負担が増える、売却や活用ができなくなるといったリスクも高まります。

とはいえ、必要な書類を集めたり、相続人同士で話し合いを進めたりするのは、初めての人にとって大きな負担です。登記を自力で行おうとすることで、書類の不備や手続きミスが生じ、かえって時間と費用がかかる可能性もあります。

相続手続きの専門集団「nocos(NCPグループ)」では、司法書士・税理士・行政書士など各分野の専門家が連携し、数次相続や共有不動産の問題など複雑なケースにも対応しています。

初回のご相談は無料、オンライン相談も可能ですので、相続登記や相続手続きに不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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