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相続の基礎知識

相続の期限一覧|手続き・相続税・放棄の期限をわかりやすく解説

相続手続きには多くのステップがあり、それぞれに期限が設けられています。期限を過ぎるとさまざまなデメリットが生じるため、何をいつまでに行うべきかを把握し、スムーズに進めることが大切です。このコラムでは、相続手続きに関わる主要な期限と注意点を詳しく解説します。

この記事を要約すると

  • 相続の手続きには期限があり、放置するとリスクが生じます。相続放棄は3カ月以内、準確定申告は4カ月以内、相続税申告は10カ月以内、相続登記は3年以内が期限です。期限を過ぎると過料や延滞税、借金相続のリスクがあるため、計画的な対応が重要です。
  • 相続開始から10カ月を過ぎると、相続税の延滞税や加算税が発生する可能性があります。また、配偶者控除や小規模宅地の特例が適用できなくなる恐れがあります。期限後でも「期限後申告」や延納・物納の方法があるため、早めの対応が求められます。
  • 相続の三ヶ月ルールとは、相続放棄や限定承認を決める期限のことです。相続人は、相続を知った日から3カ月以内に、財産を相続するか放棄するかを判断する必要があります。

1. 遺産相続に関わる手続きとその期限一覧

まず、遺産相続に関わる手続きと期限の全体像を一覧でご紹介します。

遺産相続に関わる手続きとその期限一覧

相続手続きの期限は、基本的に「被相続人が亡くなった日」または「相続開始を知った日」を起算点とします。
次に、これらの手続きについて詳しく解説します。

2. 各手続きの詳細と注意点

2-1. 【7日】死亡届・火葬許可申請書

最初の手続きは「死亡届」の提出です。死亡届は医師から渡される「死亡診断書(死体検案書)」とセットになっており、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場に提出する必要があります。この届出をすることで戸籍に亡くなったことが記載されます。なお、死亡診断書のコピーは他の手続きの添付書類になることもありますので、提出前に忘れずにコピーをしておきましょう。

また、火葬を行うためには、死亡届と一緒に「火葬許可申請書」を提出し、火葬許可証を取得する必要があります。葬儀会社が代行してくれることも多いため、依頼してもよいでしょう。

2-2. 【14日】年金停止、健康保険資格喪失、世帯主の変更

被相続人が年金を受給していた場合、年金の受給停止手続きが必要です。国民年金の場合は死亡後14日以内、厚生年金の場合は死亡後10日以内に手続きを行います。未手続きで年金が振り込まれると、返還義務が生じる可能性があるため、速やかに対応しましょう。

また、国民健康保険の資格喪失手続きや被相続人が世帯主だった場合は世帯主変更も必要で、役場に死亡後14日以内に届出が必要です。会社員などで健康保険に加入している場合は、死亡日の翌日から5日以内に健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出する必要があるため、速やかに勤務先に連絡をしましょう。

2-3. 【3カ月】相続放棄・限定承認の申出

相続人は、相続開始を知った日から3カ月以内に、相続するかどうかを決める必要があります。この期間を「熟慮期間」と呼びます。期間内に以下の選択肢から相続方法を選びます。

 ■単純承認: 財産も負債もすべて引き継ぐ
 ■相続放棄: 財産も負債も一切相続しない
 ■限定承認: 財産の範囲内で負債を引き継ぐ

相続放棄や限定承認は家庭裁判所での手続きが必要です。3カ月以内に行わないと、自動的に「単純承認」となり、借金を含む全財産を相続することになります。

2-4. 【4カ月】準確定申告の期限

被相続人が生前に所得税の確定申告をしていた場合、相続人が「準確定申告」を行う必要があります。これは、相続開始を知った日から4カ月以内に行う義務があります。期限を過ぎると延滞税や加算税がかかる可能性もあるため、速やかに対応しましょう。

2-5. 【10カ月】相続税の申告・納付の期限

相続税の申告と納付は、相続開始を知った日から10カ月以内に行う必要があります。この期限は、申告だけでなく納付も含まれるため、早めの準備が重要です。期限を守らないと、延滞税や加算税が発生する可能性があり、手続きが遅れると負担が増す可能性があります。

相続財産の総額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を超える場合に相続税の申告が必須となります。まずは、相続財産の総額が基礎控除額を超えるかどうか確認しましょう。

さらに、相続税には「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」がありますが、これらを適用するためには、遺産分割協議が完了していることが必要です。もし10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合でも、申告期限後3年以内の分割見込書を提出すれば特例の適用は保留されますが、できるだけ10カ月以内に手続きを完了させることが望ましいです。 相続税は現金での納付が原則です。財産が不動産や株式で構成されている場合には、現金を確保するための計画を早めに立てることが大切です。

2-6. 【1年】遺留分侵害額請求の期限

遺留分とは、配偶者や子どもなど特定の相続人が最低限の遺産を相続する権利です。遺言などで侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」を行います。請求期限は、遺留分の侵害を知った日から1年以内です。期限を過ぎると請求権が消滅するため、早めの対応が必要です。

2-7. 【2年】死亡一時金の受取請求、葬祭費・埋葬料(埋葬費)の請求

故人が年金保険料を36カ月以上支払っていた場合、遺族は「死亡一時金」を受け取ることができます。請求期限は、亡くなった日から2年以内です。支給額は年金保険料の納付期間に応じて異なりますが、12万円から32万円程度です。

また、故人の埋葬や葬祭を行った人に対して、故人が加入していた健康保険から支給される給付金として葬祭費・埋葬料がありますが、これにも期限があります。故人が社会保険(協会けんぽ等)に加入していた場合の「埋葬料(埋葬費)」は亡くなった日から2年以内、故人が国民健康保険に加入していた場合の「葬祭費」は葬儀を終えてから2年以内での請求が必要です。

2-8. 【3年】相続登記の期限

2024年4月から施行された法律により、相続や遺贈によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務化されました。この期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。なお、期限に間に合わない場合は「相続人申告登記」の申出をすることで一旦登記義務を果たすことができます。

2-9. 【3年】死亡保険金の請求

生命保険の死亡保険金の請求権の時効は、権利行使できる時から3年以内(かんぽ生命保険は5年)です。受取人が指定されている場合、その人が単独で請求できます。期限を過ぎると保険金の請求権が時効により消滅する可能性があるため、早めに保険会社に連絡をして、手続きを進めましょう。

2-10. 【5年10カ月】相続税の還付の期限

相続税を多く支払ってしまった場合、還付を受けることができます。還付請求の期限は、相続開始を知った日から5年10カ月以内です。この期間内に税務署に「更正の請求」を行うことで、払い過ぎた税金が返還されます。

不動産の評価額の誤りや適用すべき特例を適用していなかった場合などが還付の対象となるため、相続税を支払いすぎた可能性がある場合は、早めに税理士に相談しましょう。

3. 遺留分の割合とその計算方法

相続手続きの期限を過ぎてしまうと、以下のような大きなデメリットが発生する可能性があります。特に金銭的な負担や手続きの煩雑さが増すため、各期限を守ることが大切です。

3-1. 高額な借金の返済義務を負ってしまう

相続には、被相続人の財産だけでなく、負債も引き継ぐという側面があります。 相続放棄や限定承認を希望する場合は、相続開始を知った日から3カ月以内に手続きを完了しなければなりません。期限を過ぎてしまうと、相続人は負債を含めた全財産を相続する「単純承認」とみなされ、高額な借金が残っていた場合でも、その返済義務を負うことになります。

3-2. 税金の軽減制度などが利用できなくなる

相続税には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、税額を軽減するための制度が用意されています。 しかし、これらの特例を利用するためには、相続税の申告期限である10カ月以内に遺産分割協議を完了し、相続税申告を済ませている必要があります。もし期限を過ぎてしまうと、これらの特例が適用できず、多額の相続税を支払う必要が生じる可能性があります。

3-3. 相続税の延滞税がかかる

相続税の申告・納付を10カ月以内に行わないと、延滞税が発生します。 延滞税は、期限を過ぎた日数に応じて加算され、支払額が増えるため、相続人にとって大きな負担となります。また、長期にわたり相続税を納付しないと、税務署から督促を受け、場合によっては財産の差し押さえが行われるリスクも生じます。

3-4. 過料をとられる可能性がある

2024年4月から施行された法律により、相続登記が義務化されました。相続人が不動産を取得した場合、取得を知った日から3年以内に相続登記を完了しなければなりません。この期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料を回避するためにも、速やかに相続登記を行うようにしましょう。

3-5. 新たな相続が発生し、手続きが複雑になる

相続手続きが長引くと、さらに新たな相続が発生することも考えられます。 例えば、相続人が高齢であった場合、その相続人が亡くなると、別の相続手続きが同時に発生し、手続きがより複雑になります。相続人間での遺産分割協議や、財産の処分が難しくなり、相続手続きがさらに長期化するリスクが高まります。

4. 期限のない手続き

ここまで期限のある手続きについて解説してきましたが、相続手続きの中には期限がないものもあります。ただし、放置すると問題になることもありますので、できるだけ早めに手続きをすることをおすすめします。

4-1. 遺言書の検認

自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要です。検認は、遺言書の内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きですが、これが行われないと不動産の相続登記や預貯金の解約ができません。検認には法的な期限はないものの、遅れると相続財産の分配も遅れますので、遺言書が見つかったら速やかに家庭裁判所へ提出し、手続きを進めましょう。

4-2. 遺産分割協議・調停

遺産分割協議に期限はありませんが、協議が完了しないと遺産を分割できず、相続税の軽減措置が適用されないことがあります。また、協議が長引くと相続人間でのトラブルが発生するリスクも高まります。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判を利用することもできますが、円満に遺産を分割するためには早めに協議を進めることが望ましいです。

4-3. 銀行口座などの名義変更

銀行口座の名義変更や解約には期限がありませんが、長期間放置すると「休眠口座」として扱われる可能性があります。多くの銀行では、10年以上取引がない場合、休眠口座となり、金融機関から預金保険機構に移管され、民間公益活動のために活用することが法律で定められています。また、相続税の納付がある場合、預貯金が引き出せないと相続税の納付に支障をきたすことがあるため、早めに名義変更や解約手続きを進めるとよいでしょう。

5. 相続手続きの期限を守るためのポイント

ここまで解説してきたように相続手続きには多くの期限が定められています。これらの期限を守らないと、延滞税や過料が発生する可能性があるため、スムーズに手続きを進めるためのポイントを紹介します。

5-1. 手続きの優先順位を決める

相続手続きには、相続放棄など早急に対応すべきものと、死亡保険金の請求など比較的時間に余裕があるものがあります。まずは、法的に期限が短い手続きから優先して行うことが大切です。たとえば、相続放棄は3カ月以内、相続税の申告は10か月以内といった手続きは最優先で進めましょう。

5-2. 専門家に相談する

相続手続きが複雑であったり、多額の財産や借金が絡む場合は、早めに専門家に相談することが大切です。司法書士、弁護士、税理士など、それぞれの専門家がサポートを提供しています。複数の手続きが重なる場合、優先順位を考慮して進めていくため、期限を守りやすくなります。

5-3. 必要書類の準備を早めに始める

相続手続きには多くの書類が必要です。死亡診断書、戸籍謄本、住民票、登記簿謄本など、多岐にわたる書類を集めるのは時間がかかります。特に役所や銀行、保険会社とのやり取りには時間を要するため、早めに準備を始めることが重要です。

5-2. 相続人間での連携を大切にする

相続手続きは相続人全員の同意が必要な場面が多く、コミュニケーション不足や意見の相違で手続きが遅れることがあります。定期的に連絡を取り合い、必要な情報を共有しながら進めていくことが重要です。

5-2. 期限の管理を徹底する

各手続きの期限をしっかりと把握し、スケジュールを立てて進めることが、相続手続きをスムーズに進めるポイントです。期限の管理には、カレンダーやチェックリストを活用して、抜け漏れがないようにしましょう。特に相続税の申告や納付、相続放棄の期限は重要なため、注意が必要です。

6. よくある質問(Q&A)

Q1: 相続放棄の期限が迫っていますが、相続放棄すべきか迷っています。どうしたらいいですか?
A1.相続放棄の期限が迫っている場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることで、延長が認められる可能性があります。 期間伸長手続きの期限は、相続放棄や限定承認と同様に「相続の開始を知ったときから3ヵ月以内」です。 相続放棄の期限が迫っている場合は、司法書士などの専門家に手続きを依頼するのも有効です。
Q2: 相続税の申告期限を過ぎてしまった場合はどのように対処すればいいですか?
A2. 相続税の申告期限を過ぎてしまった場合、速やかに「期限後申告書」を提出しましょう。無申告のまま放置するよりも、早めの自主申告を行うことで延滞税や加算税の負担を抑えられるため、1日でも早い対応が望ましいです。まずは税理士に相談しましょう。
Q3. 準確定申告は必ずしなければなりませんか?
A3. 被相続人が事業収入や副収入を得ており、確定申告義務がある場合は準確定申告が必要です。年収2,000万円以下の給与所得者や、年400万円以下の年金受給者だった場合は、準確定申告の対象外となります。 副業をしていた場合も、その収入が年20万円以下であれば、申告の必要はありません。
Q4. 相続登記の手続きが遅れた場合、どのような影響がありますか?
A4.2024年4月以降は相続登記が義務化され、3年以内に手続きをしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。不動産の売却や処分もできなくなるため、早めの登記手続きが必要です。
Q5. 相続税の還付はどのように行いますか?
A5.相続税を多く支払ってしまった場合、相続開始から5年10カ月以内に税務署へ「更正の請求」を行うことで還付が受けられます。過払いが疑われる場合は、早めに税理士に相談し、適切に手続きを進めましょう。

7. nocosにできること

nocosを運営するNCPグループは、司法書士・行政書士・税理士等の有資格者100名以上を要する、相続手続きに特化した専門集団です。2004年の創業以来、累計受託件数80,000件以上の実績を重ね、現在、日本全国での相続案件受託件数No.1※となっています。全国の最寄りの事務所やご自宅へのご訪問、オンライン面談等で資格者が直接ご相談を承りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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