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相続の登記

相続登記の必要書類と有効期限を徹底解説!登記義務を怠るデメリットとは?

相続登記の必要書類と有効期限を徹底解説!登記義務を怠るデメリットとは?

相続登記には多くの書類が必要で、準備や手続きに不安を感じる方も少なくありません。とくに「どんな書類が必要なのか?」「有効期限はあるのか?」といった疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。本記事では、相続登記に必要な書類の一覧と取得先、有効期限の有無から、手続きの基本的な流れや注意点、専門家に依頼する際の費用相場まで詳しく解説します。

この記事を要約すると

  • 相続登記には多くの書類が必要で、主に戸籍謄本や遺産分割協議書などの収集・作成を含む4ステップの手続きが必要です。
  • 登記の申請は義務化されており、取得を知った日から3年以内に手続きしないと過料の対象になります。
  • 手続きは自分でも可能ですが、専門知識や時間が求められるため専門家に依頼する選択肢もあります。

1. 相続登記の必要書類と取得場所一覧

相続登記を進めるには、いくつかの書類を集める必要があります。役所で取得するものや自分で作成するものなど、種類もさまざまです。

以下の表を参考にして、何をどこで手に入れるのかを把握し、無駄なくスムーズに準備を進めましょう。

書類名/取得場所法定相続遺産分割協議遺言による相続
被相続人の戸籍謄本(出生~死亡)
→本籍地の市区町村役場
必要    必要必要(※)
被相続人の住民票の除票(本籍地の記載のあるもの)
または戸籍の除附票(本籍・筆頭者の記載のあるもの)
→最後の住所地の市区町村役場
必要必要必要
相続人の戸籍謄本
→本籍地の市区町村役場
必要必要不動産
取得者のみ
相続人の住民票
→住所地の市区町村役場
必要不動産
取得者のみ
不動産
取得者のみ
相続人の印鑑登録証明書
→住所地の市区町村役場
不要必要不要
固定資産税評価証明書
→不動産所在地の市区町村役場
必要必要必要
遺言書
→手元保管、法務局など
不要不要必要
遺産分割協議書
→自作(相続人全員で作成)
不要必要不要
登記申請書
→法務局に提出(自作または専門家作成)
必要必要必要
登記事項全部証明書
→法務局
必要必要必要

遺言書の種類によっては、被相続人の死亡の記載がある戸籍のみで足りる場合があります

2. 相続登記の必要書類に有効期限はある?

相続登記で使う戸籍謄本や住民票、戸籍の附票、印鑑証明書などには、基本的に法律上の有効期限はありません。内容が正しければ、古いものでも使用可能です。

ただし、一部の書類については法律で有効期限が定められているため、注意が必要です。

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や相続人の戸籍は、発行から時間が経っていても基本的に有効です。ただし、相続人の戸籍については、相続開始日以降に取得されたものである必要があります。

住民票の除票・戸籍の附票

法的な有効期限はありませんが、自治体の保存期間(原則5年)を過ぎると取得できなくなる場合があるため、早めに取得することが望ましいです。

印鑑証明書

相続登記で遺産分割協議書に添付する場合は、印影が一致していれば古いものでも問題ありません。ただし、遺贈による登記など意思確認が重要なケースでは、発行から3か月以内の印鑑証明書が求められます。

代理権限証明情報(法定代理人が代理申請する場合)

未成年などの制限行為能力者が登記申請人となり、法定代理人が代理人として手続きを行う場合に添付する戸籍謄本など(官公署が作成したもの)は、「発行から3か月以内のもの」を添付することが法律で定められています。

このように、ほとんどの書類には法律上の有効期限はありませんが、意思確認のための印鑑証明書や代理権限証明情報として添付する戸籍謄本等は法律で発行から3か月以内と期限が定められています。

申請時には、書類の種類と用途に応じて期限の有無を確認し、必要に応じて最新の書類を準備しましょう。

3. 相続登記の基本的な流れ4ステップ

初めての相続登記でも、流れを押さえておけば落ち着いて対応できます。

ここでは、不動産の確認から法務局への申請までの以下の4つのステップを紹介します。

  1. 相続する不動産を確認する
  2. 相続人を確定し、取得者を決める
  3. 提出書類を作成する
  4. 法務局へ提出する

手順ごとにやることを整理して、不安なく進めましょう。

なお、亡くなった方が遺言で不動産を取得する人を指定していた場合、取得者を決める必要はありません。

3-1. 相続する不動産を確認する

最初にすべきことは、亡くなった方の所有していた不動産を確認することです。固定資産税の納税通知書・課税明細書や名寄帳を確認し、登記簿謄本を取得して対象となる土地や建物を把握します。

不動産は複数あることも珍しくありません。たとえば対象となる不動産が実家の土地と建物だった場合、それぞれに対して手続きが必要です。

名義の確認は、最寄りの法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得することで行えます。誰の名義になっているのか、抵当権などの情報も確認できます。

手間はかかりますが、早めに現状を把握しておくことで、後の段取りがスムーズになります。

3-2. 相続人を確定し、取得者を決める

次に行うのは「誰が相続人になるか」を確認することです。相続人の確定は、戸籍を集めて確認します。たとえば配偶者は常に相続人となり、亡くなった方に子どもがいれば、原則として戸籍上に記載のあるすべての子どもが相続人となります。

相続人が複数いる場合は、全員の合意が必要です。「誰が実家を相続するか」「持分はどう分けるか」など、相続人全員で話し合い、結果をまとめた「遺産分割協議書」の作成をします。

一度決めた内容は、後から変更するのが難しくなります。全員が納得できる内容にするためにも、冷静に話し合いましょう。

3-3. 提出書類を作成する

不動産の取得者が決まったら、必要書類を揃えて、申請書を作成します。

相続人確定のために取得した戸籍謄本等のほか、住民票や印鑑証明書などの公的機関で取得する書類と前述したように、公的機関で取得する書類と、自分で作成する書類の2種類があります。

書類の不足や作成ミスがあると法務局から補正を求められたり、場合によっては取下げを促されることもあるため、丁寧に準備しましょう。

戸籍謄本は他の相続人でも取得することができますが、印鑑証明書は基本的に本人が取得することになります。印鑑証明書については、遺産分割協議書に署名捺印するタイミングでそれぞれに用意してもらうとよいでしょう。

また戸籍謄本等については、法務局で実施されている「法定相続情報証明制度」を活用することで、法定相続情報一覧図の写しを取得できます。この写しは、相続登記だけでなく、銀行や証券会社などの金融機関での相続手続きにも利用可能で、大変便利な制度です。

相続登記の申請時に、同時にこの制度を利用して一覧図の写しを取得することも可能です。制度を利用することで、提出した戸籍関係書類は原則として返却されます。

そのため、申請前に相続関係を把握しやすくするためにも、あらかじめ一覧図を作成しておくとスムーズです。

3-4. 法務局へ提出する

書類の準備が整ったら、いよいよ法務局に申請します。

管轄の法務局は、不動産の所在地によって決まります。東京に住んでいても、長野の不動産であれば、長野の法務局が管轄となります。

申請方法は「窓口提出」か「郵送提出」があります。郵送の場合も、必要書類に漏れがないか慎重に確認しましょう。費用としては、登録免許税が必要です。

受理されると、登記官の審査を経て、数週間で登記が完了します。完了後には登記識別情報などが交付されます。

登記識別情報通知はいわゆる「権利証」に代わる書類です。今後、不動産を売却する際や不動産を担保に融資を受ける際などに必要になります。再発行はされませんので、大切に保管しましょう。

4. 相続登記は2種類ある

相続登記には「単独登記」と「共有登記」の2つのパターンがあります。

相続人が1人なのか複数なのかによって、手続きや必要書類も異なります。それぞれの特徴を知って、状況に合った方法を選びましょう。

4-1. 1人で相続する場合は「単独登記」

実家などを1人が引き継ぐ場合、その人の名義に変える手続きが「単独登記」です。

単独登記のメリットは、名義が明確になることです。不動産の管理や売却もしやすくなるため、将来的なトラブルも防げます。

ただし、他の相続人に対して代償金を支払う必要がある場合もあるため、事前に合意内容を文書で明確にしておきましょう。

4-2. 複数人で相続する場合は「共有登記」

複数人で不動産を相続する場合は「共有登記」になります。これは、不動産の持分を相続人同士で分ける方法です。

たとえば兄妹2人で相続するなら、それぞれの持分割合を決めて登記します。実家を共同で所有する形になるため、将来の管理や売却には全員の同意が必要になります。

共有登記は、相続人全員が不動産に関与できるので公平感が強まるというメリットがあります。一方、意見の違いによるトラブルも起こりやすい点には注意が必要です。

家族で十分に話し合い、今後の管理方針まで共有しておくことが大切です。

5. よくある質問・Q&A

相続登記に関しては、費用や手続き方法など、誰もが気になるポイントがいくつかあります。

ここでは「自分でできる?」「依頼するといくらかかる?」といったよくある疑問に、わかりやすくお答えします。

Q1. 相続登記は自分でできる?
A1. 相続登記は法律上、自分で手続きすることも可能です。特に書類の準備や申請内容がシンプルなケースでは、費用を抑える方法としても注目されています。
ただし、手続きには専門的な知識や時間が必要です。戸籍の読み解きや、正確な登記申請書の作成など、初めてだと戸惑う場面が多いかもしれません。間違いがあると、法務局から補正の連絡が来ることもあります。郵送でやり取りできることもありますが、書類の修正のために法務局に出向く必要がある場合もあります。仕事や家庭の都合で時間が取れない場合は、専門家の力を借りる選択肢も検討しましょう。
Q2. 相続登記を依頼するとどのくらいのお金がかかる?
A2. 相続登記を司法書士などの専門家に依頼する場合、費用はケースによって異なります。相続関係が複雑かどうかや、不動産の数によって変わってきます。
一般的な相場は、不動産1件につき5〜15万円前後です。これに加えて、法務局へ納める登録免許税(固定資産評価額の0.4%)戸籍謄本など取得費用の実費も必要になります。専門家に依頼することで、書類のミスや手続きの遅れを防げる安心感があります。料金については、複数者に見積もりをもらい、内容を確認してから依頼するのがおすすめです。

6. 相続登記に必要な手続きを把握しよう

相続登記には複数の必要書類があり、2024年4月から申請が義務化されました。取得を知った日から3年以内に手続きしないと最大10万円の過料が科されます。

必要書類は戸籍謄本や住民票などの取得書類と、遺産分割協議書や登記申請書などの作成書類に分かれます。手続きの流れは、不動産確認→相続人決定→提出書類の作成→法務局提出の4ステップです。

単独登記と共有登記の2種類があり、書類に基本的な有効期限はありませんが、印鑑証明書など一部の書類には期限が定められているものもあります。

自分で手続き可能ですが、専門家に依頼する場合は5万円〜15万円程度の費用がかかるので、時間とお金どちらを優先したいかで決めましょう。

なお、相続手続きの専門集団「nocos(NCPグループ)」では、各分野の専門家が連携し、数次相続のような複雑なケースにも対応しています。初回のご相談は無料です。オンライン対応も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。

正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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