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相続の基礎知識

相続人と連絡が取れないときの対応方法|相続手続きを進めるためのポイント

相続人と連絡が取れないときの対応方法|相続手続きを進めるためのポイント

相続手続きを進めようとしたとき、「相続人の一人と連絡が取れない」という問題に直面することがあります。疎遠で連絡先が分からない、手紙を送っても返事がない、住所に住んでいないなど、状況はさまざまです。しかし、遺産分割協議は原則として相続人全員で行う必要があるため、連絡が取れない相続人を除外して手続きを進めることはできません。そのため、まずは相続人を正確に把握し、可能な限り連絡を試みることが重要になります。
本記事では、相続人と連絡が取れない場合の基本的な考え方から、具体的な対応方法、相続手続きを進めるためのポイントまでを、実務の流れに沿って分かりやすく解説します。

この記事を要約すると

  • 相続人と連絡が取れない場合、遺産分割協議が成立せず、相続登記や預金の払い戻しなどの手続きが進まなくなることがあります。まず戸籍や附票で相続人と住所を確認し、書面などで連絡を試みます。それでも協議が進まない場合には、状況に応じて、家庭裁判所の制度を利用して手続きを進めます。
  • 法律上、相続人に必ず連絡しなければならないという明確な規定はありません。ただし、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、相続人に連絡を取り協議に参加してもらうことが前提になります。戸籍調査や住所確認を行い、連絡を試みることが重要です。
  • 相続人の所在が分からない場合や話し合いに応じてもらえない場合には、通常の協議では相続手続きを進めることができません。状況に応じて、不在者財産管理人の選任や遺産分割調停など家庭裁判所の制度を利用する必要が生じることがあります。

1. まず押さえる基本|連絡が取れない相続人がいると相続はどうなる?

相続手続きを進めようとしたとき、相続人の中の一人と連絡が取れないだけで、手続きが大きく滞ってしまうことがあります。

特に遺言書がない場合には、相続人同士で話し合いを行う「遺産分割協議」が必要になるため、相続人全員の関与が重要になります。

まずは、なぜ連絡が取れない相続人がいると相続手続きが進まなくなるのか、その基本的な仕組みを確認しておきましょう。

1-1. 遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある

遺産分割協議の流れ

亡くなった方が遺言書を残していない場合、相続財産の分け方は相続人同士の話し合いによって決めます。これを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員が合意することが原則です。そのため、相続人のうち一人でも連絡が取れない場合には、協議そのものを成立させることができません。

仮に、連絡が取れる相続人だけで話し合いを行い、遺産分割協議書を作成したとしても、その協議は法的には無効となります。遺産分割協議は相続人全員の参加を前提として成立するものだからです。

そのため、後になって相続人の一部が参加していないことが判明した場合には、改めて遺産分割協議をやり直す必要が生じるのが原則です。

また、遺産分割協議が成立していないと、次のような相続手続きを進めることもできません。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 預貯金口座の解約や払い戻し
  • 相続税の申告・納税

このように、相続人の一人と連絡が取れないだけで、相続手続き全体が止まってしまうことになります。

さらに時間が経過すると、相続人が増えて手続きが複雑になったり、税務上の問題が生じたりすることもあるため、できるだけ早い段階で対応方法を検討することが大切です。

1-2. 相続人への「連絡義務」はあるのか

「相続人には必ず連絡しなければならないのか」と疑問に思われる方もいるかもしれません。

まず、民法には、相続人に必ず連絡しなければならないという明確な規定があるわけではありません。

しかし、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、実務上は相続人に連絡を取り、協議に参加してもらうことが不可欠になります。相続人と連絡が取れないままでは、手続きを進めることができないためです。

相続では、兄弟姉妹や前婚の子など、普段交流のない親族が相続人となることもあります。そのため、まず戸籍によって相続人を確定し、住所を調査したうえで連絡を試みることが重要になります。

それでも連絡が取れない場合には、家庭裁判所の制度を利用して相続手続きを進める方法もあります。

次の章では、相続人と連絡が取れない場合によく見られるケースについて整理していきます。

2. よくある3パターン|「疎遠」「無視」「音信不通・行方不明」で対応は変わる

相続人と連絡が取れないといっても、その事情は一つではありません。

単に疎遠で連絡先が分からない場合もあれば、連絡は届いているのに返事がないケース、長年音信不通で所在自体が分からないケースもあります。

状況によって取るべき対応は異なるため、まずはどのパターンに当てはまるのかを整理することが大切です。

ここでは、実務でよく見られる代表的な3つのケースをご紹介します。

2-1. 疎遠で連絡先が分からない(兄弟姉妹・前婚の子・認知の子など)

相続のご相談では、「兄弟とは何十年も連絡を取っていない」「前の結婚で生まれた子どもがいると聞いたことはあるが、連絡先が分からない」といったお話を伺うことがあります。

相続では、普段交流のない親族が相続人となることも珍しくありません。

特に、兄弟姉妹が相続人になるケースや、再婚家庭で前婚の子がいる場合、あるいは認知された子がいる場合などは、相続が発生して初めて「その方も相続人だった」と分かることもあります。

こうしたケースでは、まず相続人を正確に確定することが重要になります。

相続人が誰なのかを戸籍で確認したうえで、その人の住所を調査し、連絡先を探していくことになります。

連絡先が分からない場合でも、戸籍や附票などの公的資料をたどることで、手がかりが見つかることも少なくありません。

2-2. 住所は分かるのに返事がない(無視されている)

相続人の住所は分かっているものの、手紙を送っても返事がないというケースもあります。この場合、必ずしも相手が手続きを拒否しているとは限りません。

相続手続きに関わりたくないという気持ちがあったり、過去の家族関係から距離を置いている場合もあります。また、突然届いた通知に不信感を抱き、様子を見ているということもあります。

そのため、まずは相手の立場にも配慮しながら、相続が発生した事実や手続きの必要性を丁寧に伝えることが大切です。文面はできるだけ簡潔にまとめ、感情的な表現は避けることが望ましいでしょう。

それでも話し合いに応じてもらえない場合には、弁護士に交渉を依頼したり、家庭裁判所の手続きを利用する方法があります。

具体的には、遺産分割調停を申し立てることで、裁判所が間に入り、相続人同士の話し合いを進めることになります。

調停でも合意に至らない場合には、最終的に裁判所が分割方法を判断する「遺産分割審判」へ進むことになります。

第三者である裁判所が関与することで、当事者だけでは進まなかった話し合いが前に進むケースも少なくありません。

2-3. 音信不通の兄弟がいる

相続の場面では、「兄弟と長年連絡を取っていない」という状況もよく見られます。実家を離れてから何十年も交流がなく、現在どこに住んでいるのか分からないというケースもあります。

こうした場合には、まずその兄弟が現在も生存しているのかを確認する必要があります。長期間音信不通であっても、生存している可能性は十分にあるからです。

一方で、すでに亡くなっていて、その子ども(甥や姪)が相続人になっているケースもあります。このように、相続関係は時間の経過とともに複雑になりやすいため、早めに状況を確認することが大切です。

なお、兄弟が亡くなった場合でも、自治体などから自動的に連絡が届く仕組みはありません。

疎遠な親族の場合、戸籍を取得して初めて死亡の事実を知るということも実務上よくあります。そのため、相続人の状況を確認するためには、自分で戸籍などの資料を収集し、調査を進めていく必要があります。

次の章では、実際に相続人の住所や所在を調べ、連絡を取るための具体的な方法について解説します。

3. まずやるべき調査と連絡の手順|戸籍・附票・手紙まで

相続人と連絡が取れない場合でも、すぐに裁判所の手続きが必要になるとは限りません。多くのケースでは、まず基本的な調査と連絡を丁寧に行うことが重要です。

相続手続きは、①相続人を確定する、②住所を調べる、③書面で連絡する、という順序で進めるのが一般的です。

ここでは、実務で行われる基本的な流れを整理します。

3-1. 相続人の確定が最初(戸籍収集で“誰が相続人か”を確定する)

まず行うべきことは、相続人の範囲を正確に確認することです。

相続手続きは相続人全員を前提として進められるため、相続人を誤って判断したまま手続きを進めると、その後の遺産分割協議や名義変更が無効になるおそれがあります。

相続人を確認するためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集します。これにより、配偶者や子どもなどの直系卑属の有無を確認できます。

子どもや孫がいない場合には、次に父母などの直系尊属が相続人となります。

さらに父母や祖父母もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人となります。この場合は、被相続人の両親の戸籍を出生までさかのぼって確認し、兄弟姉妹の有無を調査する必要があります。

また、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子ども(甥や姪)が相続人になることもあります。

こうした相続関係は戸籍を確認して初めて判明することも多いため、まず戸籍によって相続人を正確に整理することが出発点になります。

3-2. 戸籍の附票で住所を追い、手紙で連絡する

相続人が確定したら、次に住所を確認します。そこで利用されるのが戸籍の附票ふひょうです。

戸籍の附票には、その戸籍に在籍している期間の住所の履歴が記録されているため、現在の居住地をたどる手がかりになります。

住所が分かった場合は、まず書面で連絡するのが一般的です。突然訪問するよりも、手紙で事情を説明した方が相手も状況を理解しやすく、誤解を防ぎやすくなります。

手紙には、相続が発生したこと、遺産分割協議が必要であること、連絡先などを簡潔に記載します。必要に応じて、財産の記載をしたり、相続関係説明図など相続関係が分かる資料を添付することもあります。

また、後から「通知していない」といったトラブルを防ぐため、配達状況を確認できる方法で送付することも検討します。

たとえば特定記録郵便や簡易書留などを利用すれば、手紙が配達されたことを確認することができます。

もっとも、書留や内容証明郵便は相手に強い印象を与えることもあるため、相手との関係性や状況に応じて送付方法を選ぶことが大切です。

3-3. 手紙が届かない/届いたが返信がないとき

手紙が宛先不明で返送されてきた場合には、住民票上の住所と実際の居住地が異なっている可能性があります。

このような場合には、転籍前の役所にも附票を請求したりするなど、追加調査を行います。

一方で、手紙が届いているにもかかわらず返信がないケースもあります。相続手続きに関わりたくない、内容に不安を感じているなど、さまざまな理由が考えられます。

まずは一定期間を置いて再度連絡を試みますが、それでも応答がない場合には、専門家を通じた通知や裁判所の手続きを検討することになります。

次の章では、こうした場合に利用される家庭裁判所の制度について解説します。

4. それでも連絡できないときの法的手段|不在者財産管理人・失踪宣告・調停

4-1. 住民票住所にいない=所在不明として手続きが止まることがある

相続人の住所を戸籍の附票などで確認しても、実際にはその住所に住んでいないことがあります。転居後に住民票を移していないケースや、長年音信不通になっているケースなどです。

相続手続きでは、相続人全員の関与が前提となるため、所在が分からない相続人がいると遺産分割協議を進めることができません。

そのため、住所が分からない、または住民票の住所にいない場合には、通常の話し合いによる解決が難しくなります。

このような場合には、家庭裁判所の制度を利用して手続きを進めることを検討します。

4-2. 不在者財産管理人と失踪宣告

音信不通の相続人がいる場合

相続人の所在が分からない場合、家庭裁判所の制度を利用して手続きを進めることが検討されます。

代表的な制度が不在者財産管理人ふざいしゃざいさんかんりにん失踪宣告しっそうせんこくです。

不在者財産管理人は、行方不明になっている人の財産を保護するために家庭裁判所が代理人を選任する制度です。選任された管理人は、不在者に代わって遺産分割協議に関与することができます。

一方、行方不明の状態が長期間続き、生死が分からない場合には「失踪宣告」という制度があります。これは一定期間生死が不明である場合に、家庭裁判所がその人を法律上死亡したものとみなす制度です。

相続人と連絡が取れない場合には、状況によって利用する制度が異なります。主な法的手段を整理すると次のとおりです。

手続き想定される状況主な内容
不在者財産管理人相続人の所在が分からないが、生存している可能性がある家庭裁判所が代理人を選任し、その人が遺産分割協議に参加する
失踪宣告7年以上生死が不明法律上死亡したものとみなされ、相続関係が整理される
遺産分割調停相続人の所在は分かるが話し合いが進まない家庭裁判所が間に入り、相続人同士の話し合いを調整する

4-3. 遺産分割調停(無視・対立への対応)

相続人の所在は分かっているものの、手紙を送っても返事がない、話し合いに応じてもらえないといったケースもあります。

このような場合には、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用する方法があります。

遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入り、相続人同士の話し合いを整理しながら解決を目指します。直接交渉を続けるよりも、第三者が関与することで話し合いが進むこともあります。

調停でも合意に至らない場合には、最終的に家庭裁判所が判断を示す「審判」に進むことになります。

相続人同士での話し合いが難しい場合でも、こうした裁判所の手続きを利用することで、相続手続きを前に進めることが可能になります。

5. 放置のリスクと期限|相続登記・相続税・預金(休眠預金)まで

相続人の中に連絡が取れない人がいると、「しばらく様子を見よう」と手続きを止めてしまうことがあります。

しかし、相続手続きを長期間放置すると、財産管理や税務の面でさまざまな問題が生じる可能性があります。

ここでは、相続を止めたままにした場合に起こりやすいリスクと、注意しておきたい期限について整理します。

5-1. 相続手続きを止めたままにすると起きること

まず影響が出やすいのが不動産です。相続登記がされていない状態では、売却や賃貸、解体などの処分がしづらくなります。

不動産の名義が亡くなった方のままでは手続きが進められないため、管理や固定資産税の負担だけが続くケースも少なくありません。

預貯金についても同様です。金融機関が相続の発生を把握すると口座は凍結されるため、遺産分割がまとまらない限り払い戻しが進まないことがあります。葬儀費用や生活費など、必要な資金を動かせず困るケースもあります。

さらに時間が経つと、相続関係そのものが複雑になるおそれがあります。

相続手続きを終えないまま次の相続が発生すると、新たな相続人が加わり、関係者が増えてしまいます。こうした状態になると、遺産分割協議の調整がより難しくなることがあります。

5-2. 期限があるものは待ってくれない

相続には期限が関係する手続きもあります。代表的なものが相続登記と相続税です。

不動産については、相続登記の申請が義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を行う必要があります。

相続人の間で話し合いがまとまらない場合でも、相続人申告登記などを含め、何らかの対応を検討しておくことが重要です。

また、相続税の申告・納付には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内という期限があります。

相続人との連絡が取れない場合でも、特別な事情がない限り、この期限が延長されることはありません。早い段階から専門家と相談し、対応方針を検討しておくことが望ましいでしょう。

なお、預金については、10年以上取引がない場合には休眠預金として扱われる制度があります。

ただし、休眠預金となっても払い戻しが完全にできなくなるわけではありません。とはいえ、手続きが煩雑になることもあるため、できるだけ早めに相続手続きを進めておくことが安心です。

6. よくある質問

Q1. 相続人と連絡が取れない場合、相続人を除外して遺産分割協議できますか?
A1. 遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う必要があります。そのため、連絡が取れない相続人を除いて協議を進めることはできません。仮に他の相続人だけで協議書を作成しても法的には有効と扱われないため、まずは戸籍や住所調査を行い、連絡を試みることが重要になります。
Q2. 相続人への連絡は法律上の義務ですか?どこまで探せばよいですか?
A2. 法律上、相続人に必ず連絡しなければならないという明確な規定はありません。ただし遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、実務上は連絡を取ることが前提になります。戸籍や戸籍の附票で住所を確認し、その住所へ手紙を送るなどして連絡を試みることが一般的です。
Q3. 音信不通の兄弟が亡くなっているかもしれません。役所から死亡の連絡は来ますか?
A3. 役所から自動的に死亡の連絡が届くことはありません。相続人の生死は戸籍を取得して確認する必要があります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(甥や姪)が相続人になることもあります。
Q4. 手紙を送っても返事がないときは、次に何をすべきですか?
A4. まずは時間を置いて再度書面で連絡を試みます。それでも応答がない場合には、専門家を通じて通知を行う方法もあります。弁護士を代理人として連絡することで話し合いが進むケースもあります。それでも解決しない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用して手続きを進めることになります。
Q5. 行方不明の相続人がいる場合、不在者財産管理人と失踪宣告はどちらを選ぶべきですか?
A5. 所在不明でも生存している可能性がある場合は、不在者財産管理人を選任して手続きを進めます。7年以上生死不明の場合には失踪宣告も検討されますが、法律上死亡とみなされるため慎重な判断が必要です。

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正木 博

保有資格・・・司法書士・行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士
得意分野・・・相続全般(特に遺言・相続手続きなど)

年間約30件ほどのセミナーを行い、
これまで携わった相続手続き累計件数 5,000件以上

宮城県司法書士所属 登録番号 宮城 第769号

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